ここにきて、9月28日に41万8000円で年初来安値をつけて以降底値圏で低迷を続けていたNTTの株価がじわり反転上昇の気配をみせはじめてきた。一部市場関係者からは「忘れ去られつつある国民株」と陰口をささやかれるほど株価的には人気が離散しているこの銘柄に、果たして本格的な復活はあるのか。
NTTの9月中間期連結決算は、売上高が前年同期比1.7%減の5兆3216億円、営業利益は同5.8%減の7878億円と減収減益となった。しかし、減益とはなったものの、9月中間期の連結営業利益の通期予想に比べての進ちょく率は67%に達している。下期に予定されている基本料金の値下げの影響約400億円強を考慮しても、なお進ちょく率は65%に達している。
さらに注目に値するのは、9月中間期決算と同時に発表された中期経営計画だ。計画によれば、光ビジネスの積極推進を掲げ、今後2010年までに8000億円のコスト削減と、新ビジネスによる5000億円の増収を目標としている。売上高の増収については不確定要素が多いものの、大幅なコスト削減計画は実現性が高く、これは株価面でもプラス評価できそうだ。
5000億円の増収要因の内訳は、2500億円が今後さらなる市場の拡大が見込まれる中堅中小企業向けソリューション関連の売上高、残り2500億円は次世代ネットワーク上のコンテンツ配信に付随する課金代行などのビジネス関連によるものとしている。
一方、8000億円のコスト削減の内訳は、人件費削減で3000億円、減価償却費の低減で1000億円、その他の物件用の費用で4000億円の削減を予定している。団塊世代社員の大量退職本格化による人件費の削減と、設備投資抑制による減価償却費の低減は確実に実施されることになる。
日興シティグループ証券は7日付のレポートで、投資評価を「2M」(中立・中リスク)から「1M」(買い・中リスク)へ、目標株価も従来の50万円から54万円へとそれぞれ引き上げた。引き上げの理由についてレポートでは「中期経営戦略にて表明された光化の本格推進をポジティブに評価。回線の引き込み工事を要するFTTH(光ファイバー接続)の場合、地域密着型の営業体制が重要。同社の全国拠点網、4万人の営業体制が強みとなり、ブロードバンドシェアの早期改善に期待が持てる状況にある」としている。
NTTの最近の株価は、7月の直近高値59万8000円以降ジリ安傾向をみせていたが、9月安値の41万8000円から徐々に下値を切り上げる展開となってきており、8日には一時、47万4000円高値まで買い進まれる場面もあった。
気が付いてみると、現在の株価(47万円水準)で試算した今3月期の連結PERは11倍台とかなりの割安水準となっていることも確か。さらに、自社株買いを積極的に継続していることなども株価上昇の支援材料となりそうだ。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」