IBMのもう1つのスパコン技術は温故知新の複合型 - (page 2)

Stephen Shankland(CNET News.com)2004年11月09日 09時54分

 ベクトル型システムも、スカラ型マシンのように組み合わせてクラスタを構成することが可能で、このアプローチは地球シミュレータで採用されている。地球シミュレータは1秒間に35兆9000億回の演算という処理速度を誇っており、米国ではスーパーコンピューティングの王位を奪われたことに政府が苛立ちを覚えている。

 エネルギー省長官のSpencer Abrahamもこの状況に懸念を示した1人だ。Abrahamは最近、ローレンス・リバモア国立研究所に新IBMスーパーコンピューターの見学に訪れた際にこの問題に触れ、「米国にとって、コンピューティングの最先端に存在し続けることがどれほど重大なことか、改めて述べる必要はないだろう」と語っている。

 連邦議会はスパコン開発への助成金を増やすための新法案策定に取り組んでいる。「科学分野でのリーダーシップが、21世紀には20世紀よりもはるかに多く脅かされるとの認識が連邦議会に広がっていると思う」とAbrahamはインタビューで答えている。

 Kramerによると、ViVAプロジェクトは2000年秋にIBMとNERSCのスタッフ約30人が集まって始めたものだという。

 このミーティングは、「現在のコモディティベースのコンピューティングに関するロードマップは、科学コミュニティの需要を十分満たせていないという事実に対処するため」に開催された、とKramerは述べている。「この議論のなかで、コモディティプロセッサにノーコストもしくはごく少ないコストで機能を追加し、現在および将来の科学コンピューティングに対応できるものにするというアイディアを思いついたのだ」(Kramer)

 このアイディアが現在のViVAになった、とKramerは述べている。NERSCは他のコンピュータメーカーらともバーチャルベクトルを議論しているが、圧倒的に高い関心を示しているのはIBMだ、とKramerは言う。

 バーチャルベクトルのアイディアを試したのはIBMが最初ではない。独ミュンヘン市のライプニッツコンピューティングセンターに導入された日立のシステムでは、それぞれ1つのバーチャルベクトルプロセッサにリンクされた8個のプロセッサからなるノードが数十個配置されている。またCrayのX1には、接続すると1つの大きなプロセッサとして機能する4つのベクトルプロセッサ、「シングルストリーム・プロセッサ」(SSP)が搭載されている。

 Illuminataのアナリスト、Jonathan Euniceによると、実際にバーチャルベクトルという発想は10年以上前から存在するという。SGIの当時の最高技術責任者(CTO)Forrest Baskettは、IBMのPower製品などのRISCチップが改善していることなどを根拠に「バーチャルベクトルの実現を予言し、心待ちにしていた」という。

 「これこそ、Baskettの理論の証明となるものだ。Baskettは1991年に、RISCが典型的ベクトル型プロセッサのスピードにかなり近づいてきたことをグラフで示し、最終的に特殊なプロセッサがほとんど必要なくなるだろうと予想した。一般的なプロセッサにベクトル型プロセッサの振りをさせればよいのだ」(Eunice)

 ベクトル型マシンはメモリから大量のデータを取得しそれを処理して保存する上で、効率のよいバルク処理が行える、とWillardはいう。スカラ型コンピュータの多くはメモリから適切な情報が届くまで待ち状態になるが、ベクトル型システムではこうしたデータをストリームで入出力できるので、プロセッサの演算エンジンをフル稼働に近い状態に保つことができる。

 またベクトル型マシンには、「収集/分散」(gather/scatter)技術によるメリットもある。収集/分散とは、ベクトル型プロセッサがメモリ上に広く散在するデータを簡単に読み書きできる技術だ。これに対してスカラ型プロセッサが最も効率よく扱えるのは、メモリ内の連続した場所に配置されているデータだ。

 Kramerによると、ViVA-2ではこうしたメモリの問題に対処しているという。

 しかしCrayは、バーチャルベクトル型マシンが将来、障害にぶつかるだろうと考えている。問題の1つはオーバーヘッド、つまり個々のプロセッサが、処理そのものではなく制御や同期タスクに要する時間だ。

 「個々のプロセッサが独立して稼働し、独自の命令を受けてそれをデコードするのだとすれば、8個の別々のプロセッサが独立の命令を処理しても、1つのベクトル型プロセッサが1つの命令を処理するだけの実行効率は得られない」(Scott)

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