当世ハイテク球場事情

Evan Hansen(CNET News.com)2004年11月01日 15時30分

 米大リーグのHouston Astrosは、野球では惜しくもワールドシリーズ出場を逃したものの、無線技術の導入に関してはいまだに優勝を争う位置に着けている。

 Astrosの本拠地Minute Maid Parkには無料で使えるWi-Fiネットワークが導入されている。先月AstrosがNational League優勝を賭けてSt. Louis Cardinalsと戦ったプレイオフの期間中には、合わせて613人のファンがこれを利用し、接続時間は合計約1500時間を記録した。

 この利用者数や接続時間はわずかなものに思えるかもしれない。しかし、この数字が指し示しているのは、現在高まりを見せるあるトレンド--つまり、現在ますます多くのチームが、球場内で無線のインターネット接続サービスを提供するようになっている、ということだ。こうした球場では、ファンは観客席にいながら最新の統計データを入手したり、電子メールを送信することができる。Astrosは今年のオールスターゲームの期間中に、San Francisco Giantsと共に、球場内で利用可能な無料Wi-Fiサービスの提供を開始した。

 「ハイテクを使って、ファンに(野球を)楽しんでもらおうと考えている」と語るのは、Astrosのマーケティング担当バイスプレジデント、Andrew Huangだ。同氏は、「インスタント・ビデオリプレイや電子スコアカードに加え、ファンが座席にいながら売店に注文できるインタラクティブなサービスの提供に取り組んでいる」と述べた上で、「(インタラクティブな売店については)運搬上の問題があるが、Wi-Fi技術がなければその問題について検討することもなかった」と語った。

 スポーツ競技場やアリーナにはハイテク技術が次々と導入され、球団オーナーやファンが内に秘めるオタク心を満足させるのに必要な、ありとあらゆるものを提供している。

 こうした技術のなかでは、Wi-Fiなどほんの序の口に過ぎない。高品位テレビ(HDTV)、モバイルメッセージング、電子発券などの新たに開発された技術が、時代遅れの競技場を急速に最新技術のショーケースへと変身させている。

 この動きの背景にある理屈は単純明快だ。つまり、観客をいっそう楽しませることができれば、観客動員数が増え、入場料収入が増加し、チームの経営も潤い、それがさらにチームへのサポート強化につながる、という具合だ。

 スタジアムの設計は、1985年に1つの分岐点を迎えた。当時、プロフットボールのMiami Dolphinsを所有していたJoe Robbieは、シーズンチケット保有者に豪華なボックス席や座席を販売するという斬新な資金調達方法を、他のスポーツチームに先駆けて実施した。スポーツの専門家らによると、それ以来プロチームのオーナーらは新スタジアムの建設をライバルチームに対抗するための手段として利用してきており、しばしばハイテク技術がその先導役を務めているという。

 最新設備の整った競技場を拠点とするチームが、古くて設備の貧弱な競技場を拠点とするライバルチームに比べ、経済的に優位に立つケースがますます増えている。現代の競技場は明らかに収益源を生み出す目的で設計されており、チームにさらなる利益をもたらし、高額年俸の有力選手の獲得を可能にする。その結果、チームの成績も上がり、観客動員数が増え、入場料収入も増加することになる。

 「各チームが新スタジアムの建設に躍起になっているのは、もっぱら収益増が目的だ」と語るのは、イリノイ州レイクフォレスト大学の経済学教授で、スポーツ経済学について精力的に執筆活動を行なっているRobert Baadeだ。同教授によると、「現在、ありとあらゆる種類のスタジアムが建設されているのは、各チームのオーナーが経済的に時代遅れなスタジアムでは競争に勝てないと認識しているからだ」という。

 スタジアムのオーナーらは、次のキラーアプリケーションを求めて幅広い分野に調査の手を広げており、高音質の音響システム、最新鋭のビデオディスプレイ、豪華な設備、さらにWi-Fiなどの未完成技術に至るまで、スタジアムに必要なありとあらゆるものを試している。

 現在いくつかの競技場では大規模な改修工事が行われているが、これは自宅からHDTVで観戦するファンのためのものだ。

 「(各スタジアムは)場内にHD向けのケーブルを敷設しなかった」とMediaOne社長のBen Schickは語る。同社はSan Francisco Giantsの放送を管理するケーブルテレビ会社だ。

 現在、ケーブルを使用した場合のHDTVシグナルの伝送可能距離はおよそ300フィートだ。つまり、各放送局は仮設ケーブルを引くかシグナルを圧縮する必要があるが、それでは映像の質が落ちる可能性がある。Schick の推計によると、各スタジアムをHDTV放送用に完全に改修するには、築年数その他の要因に応じて、1カ所当たり30〜75万ドルのコストがかかるという。

 Schickによると、そのコストを誰が負担するかという問題をめぐり、スタジアムオーナーと放送局との間に対立が生じたという。「その論議が始まったのは今年に入ってからだ」(Schick)

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]