Microsoft最高経営責任者(CEO)のSteve Ballmerは、このところ非常に忙しい。
欧州では、今年になって出された独占禁止法違反に対する裁定について、法廷の判断を待っているところだ。また、デジタル音楽市場では、Apple Computerとの差を詰めようと追い上げをはかり、同時に違法コピー防止技術の開発にも取り組んでいる。
一方、次期Windowsの「Longhorn」はいまだ開発の途上にあり、さらにどちらを向いても、新しいウイルスが同社の製品のねらっており、また皆が安全のためにはMicrosoft以外のブラウザを使ったほうがいいのではないかと考えているように思われる。
しかし、先週ロンドンで英国のジャーナリストを相手にさまざまな話題について語ったBallmerは、相変わらず絶好調だった。
「私はITの未来と、そのなかでMicrosoftが演じる役割について、基本的に楽観視している。ITを牽引するのはムーアの法則と、ソフトウェア分野の技術革新だ。そして、後者にこそ我々の出番がある。私の見るところ、いまよりずっと多くの人に統合型のデバイスが行き渡るようになる。現在スマートフォンはまだそれほど多く売れてはいないが、今後はもっと増えるだろう」と同氏は述べた。
新しい市場や製品に関して、Ballmerは「一番乗りになれない時には、他社より先にきちんとしたものを出す。それも無理であれば、どこよりも早く利益を稼げるようになる、というのが我々の目標だ。我々はうまく戦っており、合理的な環境に戻ろうとしている。そして、世界各地で多くの法的な問題を決着させた。我々は欧州委員会との問題も自ずと解決すると信じている」と語った。
Ballmerはこの他に、以下のような話題について自分の考えを語った。
--Trustworthy Computingの取り組みについては、どの程度の進歩があったと考えていますか。
私がMicrosoftにいる限り、我々は『Trustworthy Computing』の取り組みを続けていくでしょう。サイバースペースには悪い奴らがおり、こうした連中は今後もいなくなりはしません。我々はこれからも警戒を続けていく必要があります。私がMicrosoftにいる間は、そうした状態が続くことになります。悪い奴らは1度うまくやるだけでいいが、我々のほうはそうはいきません。いつも正しい対応をする必要があるのです。Microsoftでは、少なくとも3年分に相当する進歩がありました。5、6年前にもウイルスが存在しなかったわけではありません。(いまよりも)大きな被害が出た時期もありました。この1年間の状況は、その前の1年と比べて格段に改善しています。この先2年から3年の間には、我々の側でも十分な対策を打てるようになり、また顧客側でも十分なセキュリティ施策を実装するようになると考えています
--Windows XP以外のOSを利用している顧客がまだたくさんいますが、彼らのセキュリティについてはどう考えていますか。
顧客に対して、「最新版のOSを使えば問題は解決します」とは決して言えません。我々が隔離の必要を説くのも、そうした理由からです。感染したシステムを隔離するために、幾通りかの方法が必要でしょう。実際に、企業へのウイルス感染経路で一番多いのは、ある時はネットワークに接続した状態で使われ、また別の時にはネットワークから切り離された状態で使われるようなマシンを通して感染する経路です。こうしたマシンにネットワーク接続を許す際にどうチェックをすればいいでしょうか。どうすれば、必要なパッチがすべて当たっていることを確認できるでしょうか。この問題を解決するには、一種の隔離が必要となります。我々はLonghornの発売までに、こうした機能をWindowsに盛り込みたいと考えていますが、しかしもっと前にやることを目標にしています。
--FirefoxやMozillaなど、Internet Explorer(IE)以外のブラウザが人気を集めていますが、これは近年IEに技術革新が見られないことに対するユーザーの不満を反映しているのでしょうか。
セキュリティの問題に集中して取り組んだために、一部の新機能の開発が後回しにされました。Windows XP Service Pack 2(SP2)の開発の影響でで、中止になったものもいくつかあります。しかし、実際のところ、SP2ではブラウザに非常に大きな変更を加えています。我々のこうした戦略を弁護しなくてはならないというのは、私にはおかしなことに思えます。普通は、我々が「これだけたくさんの新機能を追加しました」というと、「セキュリティについてはどうなんだ」という答えが返ってきます・・・ユーザーが非常にたくさんの機能を望んでいることは分かっています。しかし、我々はセキュリティと信頼性の問題に集中して取り組まなくてはなりませんでした。
--Sender IDの提案が結局受け入れられずに終わりましたが、現在スパム対策技術について何か計画されているものはありますか。
Sender IDはとても優れた技術だと思います。我々は、あの技術のライセンス条件についてとてもオープンなやり方をしようとしていたと思いますが、それでも受け入れられませんでした。いまは少し考え直しているところですが、あの技術やそのライセンス方法については、いまでも間違っていないと考えています。
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