カリフォルニア州バークレー発--Microsoft会長のBill Gatesは10月1日(米国時間)、ベイエリアでの講演ツアーの皮切りとして、大学生を相手にオープンソースからマラリア、次世代Xboxに至るまでさまざまな話題について語った。
Gatesはカリフォルニア大学バークレー校で工学部の学生を前に、PCが約束を実現するためには多大な作業が必要だと述べた。同氏は「グラスはすでに半分満ちている」と主張しながらも、コンピュータは今だに信頼性も使いやすさも十分ではないと語った。
「いまのところ、本来あるべきものがまだ実現されていない」とGatesは述べ、人工知能の各分野でさらに研究に取り組むよう求めた。この分野の研究が進めば、音声認識など長年期待されているタスクの処理がついに可能になる。
Gatesはこの日各地を回り、教育や慈善事業、IT業界などさまざまな話題について講演を行なった。Gatesは、昼食時にはCommunity Foundation Silicon Valleyから慈善事業賞を受け取り、午後にはマウンテンビューにあるComputer History Museumでハイテク業界の関係者を前に講演した。なお、同氏は今年に入って、東海岸の5つの大学をまわる講演ツアーも実施している。
Gatesは、ハイテク分野の雇用を求めて、米国が他の国々との直接的な競争を迫られるなかで、バークレー校など全米でトップレベルの研究水準を誇る大学は、自国の最大の強みだと述べた。しかし同氏は、保護主義に対して注意を促し、富は世界中に広まるべきものだと警告した。
Microsoftの最大の功績は何かと尋ねられたGatesは、PCにあわせて登場したソフトウェア業界の誕生を挙げた。しかし、同氏のお気に入りプロジェクトであるTablet PCならびに次期バージョンのXboxも非常に素晴らしい、とGatesは語った。
「次期Xboxは、生産性向上には向かないかもしれないが、とても楽しいものになる」(Gates)。同氏は、あまり詳細は語らなかったものの、コミュニケーションと、プレイヤーだけでなく観衆が存在するという発想が、次期Xboxで重要な役割を演じると述べた。「1人で人工物を撃つだけではない」(Gates)
またGatesは、中国の海賊版ソフトウェア対策--中国で使用されているMicrosoftソフトウェアの99%は違法コピーだ--などの課題にも言及した。
「彼らを非難し、『あなた方はやり方を改めねばならない』と突然言ってもどうにもならない。(我々は)その土地における知的所有物についての正しいバランスを取らねばならない」(Gates)。同氏は将来、少なくとも企業にはソフトウェアの代金を支払って欲しいが、ただしMicrosoftにとって従うべき明らかな道筋はないとした。「時にはやり過ぎてしまうこともあるだろうし、反対に足りないこともあるだろう」(Gates)
米国一の大金持ちであるGatesは、お金を分け与えることにも触れた。同氏にとってお金を寄付することは、稼ぐよりも難しいことがあるという。なぜなら、ビジネスにおいては何がうまくいくかを簡単に見分けられるが、非営利の世界ではその判断がとても難しいからだそうだ。
Gatesはもともと、60歳代でMicrosoftを辞めて引退するまでは、財産の寄付をしないつもりでいたという。
「一方で『お金を稼ごう』といいながら、同時に『さあ(お金を)寄付しよう』といっていたら精神分裂になってしまうと思っていた」(Gates)
しかし、同氏は人口のコントロールや疾病のトレンドを取り扱った書物を読み進めるうちに、これ以上待ってはいられないと確信したという。同氏はこれまで、開発途上国に影響を与えている病気(の対策)に焦点を当てた活動に寄付を集中させていると述べた。
先進国で蔓延するいわゆる「贅沢病」には、医薬品業界や政府からの研究資金が潤沢に提供されている一方で、毎年100万人の生命を奪うマラリアの研究には、全体のわずか0.1%しか資金が割り当てられていないことを同氏は発見した。また、マラリアの1種にかかった人の数は現在2億人に上っているという。
「そのことを知って、私は非常に驚いた」と述べた同氏は、自らの提供した5000万ドルの資金でマラリアに関する研究費が倍増したと付け加えた。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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