情報処理推進機構(IPA)は10月1日、日本のソフトウェア分野の競争力強化を目的としたソフトウェア・エンジニアリング・センター(SEC)を設立する。所長にはIPA参与の鶴保征城氏が就任する。産官学が連携し、ソフトウェア工学に基づいて効率的なソフトウェア開発手法の作成に取り組む。
情報処理推進機構 理事長の藤原武平太氏は、「2000年のソフトウェア輸入額が約9000億円であったのに対し、輸出額はわずかに約90億円だった。これは日本のソフトウェア競争力が国際的に見て弱いということであり、競争力を高めるため産官学が連携する必要がある」とSECの設立趣旨を説明する。
主な活動内容はエンタプライズ系ソフトウェアや組込み系ソフトウェアの開発力強化と、社会インフラ向けソフトウェアの開発の2つ。
ソフトウェア・エンジニアリング・センター所長に就任する鶴保征城氏 |
まずエンタプライズ系ソフトウェアについては、約1000の開発プロジェクトのデータを11社から収集し、規模や品質、工期、生産性などに関する定量データベースを作成する。集められたデータはSECが比較分析し、結果を一般に公表する。鶴保氏は「ソフトウェア開発の課題の1つに、ベンダーとユーザーの認識のずれが挙げられる。これはソフトウェア開発の定量化がされておらず、共通のものさしがないために起きるものだ」と指摘し、今回の取り組みによって問題が解決されるとの見通しを示した。
そのほかに、ソフトウェア開発の見積もり手法に関するフレームワークの作成や、ソフトウェア開発プロセスの標準化、ユーザーやベンダーなど利害関係者の役割分担を明確化したガイドラインの策定も行っていくとしている。
組込みソフトウェアについては、自動車やデジタル家電、携帯電話などの製品に占める比重が高まっていることから、品質を向上させるための開発手法や開発プロセスの評価改善手法を確立する。また、組込みソフトウェアの開発に必要なスキル項目を体系化した組込みスキル標準の策定などに取り組む。
社会インフラ向けソフトウェアの開発については、エンタプライズ系ソフトウェアや組込み系ソフトウェアで導き出した効率的なソフトウェア開発手法を利用して行う。まずは道路交通システムの共通ソフトウェアプラットフォームの構築に取り組む予定で、自動車メーカーやソフトウェアベンダーとともに、3年間でソフトウェアの開発を行う予定だ。
SECの所員は30人となる見込み。IPAの職員のほか、企業からの出向を受けるという。また、企業や大学、経済産業省などから約120名が各プロジェクトに参加する。
経済産業省は今年度、SECのために14億8000万円の予算を確保しているという。これは人件費のほか、調査分析、データの解析、ソフトウェアの開発などに使われる。経済産業省 商務情報政策局 情報処理振興課 課長の小林利典氏によると、2005年度は28億円の予算を請求しているとのことだ。
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