サンフランシスコ発--IBMは米国時間4日、自社が保有する膨大な数の技術特許権を使って、Linuxに攻撃を加えることはしないと約束し、また他社にも同調を求めた。これは、オープンソースムーブメントの頭上に垂れ込める暗雲を払いのけたいと考える同社の意思表明といえる。
「IBMには、自己防衛を余儀なくされない限り、Linuxカーネルに対して特許を振りかざして権利を主張する意図は全くない」と同社の技術・製造担当シニアバイスプレジデントのNick Donofrioは語り、LinuxWorld Conference and Expoで同氏の講演に集まった聴衆から拍手喝采を浴びた。
IT業界で最も多くの特許を保有するIBMから訴訟を起こされるのではないかと心配していた一部のベンダは、この発表を聞いてほっとしたことだろう。だが、この問題よりもさらに具体的な危険--つまり、Linuxをはっきりと敵視するMicrosoftが攻撃を仕掛ける可能性が、この発表で消えたというわけではない。
Microsoftはこの件に関するコメントを控えている。しかし4月には、同社の主任弁護士が、Microsoftには自社技術のライセンス供与を積極的に進める用意があると語っていた。しかしながら、主要オープンソースライセンスの1つであるGeneral Public License(GPL)管理下のソフトウェアでは、使用料の支払いが必要になる特許ライセンスは禁止されている。
IBMの発表は時宜を得たものといえる。Open Source Risk Management(OSRM)は米国時間2日に、IBMが保有する60件の特許について、Linuxがその権利を侵害している可能性があることを明らかにした。OSRMではLinuxユーザーに対して法的保護を提供する保険のようなサービスを販売している。
さらに、Hewlett-Packard(HP)のある幹部が2年ほど前に書いたメモが先ごろ明るみに出たが、そのなかではMicrosoftがLinuxに対して特許侵害訴訟を起こす可能性が強調されていた。またMicrosoftは今年新たに3000件の特許を申請したいと考えている。ちなみにOSRMの考えでは、Microsoftの保有する特許のなかには、Linuxが侵害している可能性のあるものが27件存在するという。
IBMは数年前から、どのコンピュータ関連企業よりも多くの特許を毎年取得してきた。さらに同社は、これらを活用する意欲も見せている。Unixのプロプライエタリな技術をオープンソースのLinuxに移植するのは契約違反だとして、SCO GroupがIBMを提訴したときも、IBMは3件の特許侵害を主張して逆提訴に出ている。
しかし、ことLinuxに関しては他社もIBMの誓約を見習うべきだろう。「ITコミュニティにも特許権の行使に関して同様の声明を出すよう求めたい。そしてLinuxコミュニティには、今後作業を進めていく中での特許侵害訴訟を回避する手順の確立に向けた協力と、問題発生時のすみやかな解決を求めたい」(Donofrio)
オープンソースの提唱者Bruce Perensは、オープンソースムーブメントを食い止めるために特許を使った攻撃が起こると考えているが、その同氏はIBMの呼びかけに応えて、さらに多くの事柄を求める発言を行った。同氏は、口約束だけでなく、きちんと署名した誓約書が必要であり、またオープンソースのプログラマーやユーザーが提訴された場合の弁護支援も欲しいと語った。「IBMやHPなどからは、Microsoftから訴えられた場合には、ただ傍観するのではなく、彼らが擁護してくれるという言葉を聞きたい」とPerensは述べ、「輝く鎧を身にまとった騎士が助けに来てくれなければ、私は10日も裁判所に拘束されてしまう。そして11日目には和解に応じなければならなくなる」と語った。
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