「MP3」という文字列には、母音が見あたらない。でも、これは確かに単語であり、今となっては辞書にも載っている。
この音楽ファイルフォーマットは、Napster革命の波に乗って1990年代後半に普及し、Apple ComputerのiPodミュージックプレイヤーが成功したおかげで、現在も広く利用されている。マサチューセッツ州スプリングフィールドでも、MP3が、IT業界の一技術からポップ・ミュージック業界の主流フォーマットに変貌するのを、言語の守護神は見逃さなかった。
新たに改訂されたMerriam-Webster's Collegiate Dictionary(Merriam-Websterは、多くの種類の英英辞典を発行する米国企業)には、「MP3」だけでなく、MP3の語源にもなった「MPEG」という頭字語や「digital subscriber line(デジタル加入者回線)」、「information technology(情報技術)」など、技術関連用語や熟語がいくつか掲載されている。
しかし、MP3が特に注目に値するのは、この言葉の掲載許可が下りるまでにかかった時間の短さだ。新しい単語が辞書に掲載されるまでには、20年近くかかることがあり、これでも速い方だとされる。1996年に初めて登場した「MP3」という単語は、わずか8年で辞書に載ってしまった。
Merriam-Websterの社長兼発行者のJohn Morseは、「ウェブ関連用語が言語として確立されるまでの速さには驚かされる。クリップボードやブラウザ、ページなど、ウェブで使用される言葉は元来、紙の世界を象徴するものだった。ウェブ用語を作り出した人々が、この言葉のメタファーを利用して生活に取り入れやすい単語を使ったのは、賢明な判断だった」と語った。
ところが、これら2つの音楽関連用語(「MP3」と「MPEG」)は、このようなメタファーを利用しているわけではない。これらが、短時間の間に言葉として認識された背景には、Britney SpearsやWilco、Madonnaからインターネットへの転向が遅かったMetallicaにいたるまで、さまざまなアーティストのデジタル音楽コレクションを個人的に作りたい、という消費者の願望が大きかったことがあるかもしれない。
これに対し、この辞書に新たに掲載されたほかのハイテク関連用語は、掲載までにかなりの時間がかかっている。Merriam-Websterが「digital subscriber line(デジタル加入者回線)」を最初に辞書に掲載したのは1984年、「information technology(情報技術)」については1978年だった。
Merriam-WebsterではCollegiate Dictionaryの新版を10年毎に発行しており、現行の第11版は昨年登場した。新たに追加されたこれらの単語は、初年度の年次改訂の一環としてこの辞書に掲載された。では、来年は何が掲載されるだろう?
「われわれは、『blog』をかなり慎重に検討しているところだ」(Morse)
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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