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第1回:ネットオークションが突きつける知的財産権への課題 - (page 2)

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 それでは、日本に大量流入する海賊版アニメを、水際で食い止めることはできるのだろうか?税関ではさまざまな形で知的財産権侵害物の取り締まりを行っているが、主に偽ブランドなどの違法商標物の対策に追われており、アニメコンテンツやビジネスソフトまではなかなか手が回らないのが現状だという。

 ヤフーの別所直哉法務部長は、サービス提供者のみが取り締まりを行うのには限界があると語る。「業界ごとに商品も違いますし、水際対策の対応も異なっているので、オークション運営者側がすべての違法複製物の取り締まりを行うのは困難です。税関との具体的な話し合いに関してはまだですが、今後は互いに協力することが必要になるでしょう。また、不正商品を特定できるのは権利者だけです。不正商品にはどんな特徴があるのかといった具体的な情報を持っているのは権利者側で、オークション運営者にはそういった情報は一切ありません。それが問題を難しくしているのです」

本人確認を厳しくすることで対応

 実際のところ、オークション運営者に海賊版や模倣品に関する通報を行うのは、権利者が多いという。別所・ヤフー法務部長は、「落札者は、たとえばマイクロソフトのOSが市販のCD-Rに焼かれて販売されていたといった極端な場合を除き、落札した商品が知的財産権侵害物に該当するかどうかは分かりません。ですから、ユーザーからの通報だと、不正商品に関しての情報が本当に正しい情報かどうかの確証がなく、対応が難しいのです。それにユーザーからの通報はほとんどないので、不正商品を見つけることができるのは、ほぼ権利者からの連絡のみになります」と説明する。

 権利者側は、自分たちの知的財産権が侵害されていないか随時調べている。出品ページに掲載された写真や説明文から判断する場合もあれば、判別がつきにくいものは実際に落札し、鑑定して確かめているという。デジタル著作権を保護するための業界団体、コンピュータソフトウェア著作権協会(以下、ACCS)によると、2003年7月末〜11月末の4カ月間で、Yahoo!オ−クションでは約4000件の海賊版の販売が確認された。ACCSのほか、音楽事業に関する知的財産の維持、管理及び保全を行うための団体、日本音楽事業者協会、日本動画協会、ブランド企業の知的財産権を保護するための団体であるユニオン・デ・ファブリカンなどの各権利団体は、これまでに多数の出品物を落札し、写真や説明文、出品傾向を分析している。

 ACCSでは、オークションのQ&A機能を使って不正商品を販売する出品者に警告メールを送りつづけている。しかし、警告メールを送り始めた当初は効果的だったが、次第に効果が薄れてきたそうだ。なお、オークション運営者はACCSがどの出品者に警告メールを送ったかを知ることはできず、ACCSはメールの送り先の名前や住所を運営者からもらうことはできない。

 オークション運営者は、こうした権利団体からの通報にしたがって当該出品を断るようにしており、不正商品を繰り返し出品するユーザーはオークションそのものに参加することができなくなるよう、IDを利用停止処分にする。何回まで大丈夫なのかに関しては、悪用される危険性があるので公表はできないが、出品者の対応によっては、一回目からIDを利用停止にする場合もあるという。

 しかし、たとえIDが利用停止になったとしても、すぐに新たなIDを作り、不正商品を出品することができることが問題となっている。たいていのオークションサイトではクレジットカードや銀行口座で本人確認をしているので、IDが利用停止になったユーザーでも、異なるカード番号や口座番号を入力すれば、また新しいIDをすぐに作成することができるのだ。この問題に対して、ヤフーは7月1日からオークションに入札、出品、質問するための「プレミアム会員登録」に対して、住所確認を行うようになった。書かれた住所にパスワードを郵送し、そのパスワードを入力しなければ出品ができなくなる仕組みである。この動きにより、他社も本人確認を厳しくチェックするものと予想される。

オークション技術そのものを否定?

 オークション運営者はこうした努力を続けているものの、不満の声を募らせる権利者も多く、運営者側が権利保護活動を行うよう主張する人々や、流通に大きな変化を起こしているオークション自体の存在を否定的に捉えたり、産業革命時の「打ちこわし」と同じような心情でP2P技術自体を憎んだりする権利者も多い。これに対して、サービス提供者側は、運営側は出品物を見たり触ることができないうえに持っている情報が少ない、また、出品物の事前チェックを行うと検閲に当たり、電気通信事業法に違反するなどの制約があると主張する。

 別所・ヤフー法務部長は、「技術はあくまで中立的なものです。使い手によっては適切ではないことも起きますが、それが拡大しないように運営者は気をつかっています。どれだけ違法品を見つけることができるかは、裏を返せばどれだけ権利者側からの情報をもらえるかにかかっています。ACCSのように情報提供を行い、歩み寄って協力すれば、大きな効果があります。しかし、積極的な対策を採っていない業界は、違法品の多くが削除されることなく出品され続けているのです」と語る。

 サービス提供者と権利者との、互いの協力体制は可能なのだろうか?次回は、知的財産権の保護に関して不満を募らせる権利者側の主張と、それに対して困惑するオークション運営者の本音に迫る。

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