有名なIT企業と映画スタジオ各社が力を合わせ、DVD用の新しいコピー防止規格を策定することになった。これにより、ホームネットワーク内での高品位(HD)映画の複製と利用が可能になる。
「Advanced Access Content System(AACS)」という名前のこの技術は、現在一般的なDVDの保護に使われているコピー防止技術に替わるものだが、ただしこちらは次世代の高品位ディスク専用となる。先に伝えられたように、この技術の支持団体にはIBM、Intel、Warner Bros、Disney、Microsoft、ソニー、そして松下(パナソニック)に加え、東芝が参加している。
映画を正規のDVDプレイヤーでしか再生できない今日の技術と異なり、AACSでは映画のコピーを家庭のコンピュータに保存し、ネットワークに接続されたほかのデバイスで鑑賞したり、これを携帯型のムービープレイヤーに転送できるようになる可能性もある。
Intelのシニアスタッフエンジニア、Michael Ripleyは電話会議の中で、「われわれは、今日家庭でできること以外にもディスクの新しい使い方を多数実現していく。広範囲に支持され、関係業界の幅広いニーズに対応する何らかの基盤となるものを、必ずしも過去と同じ方法にこだわらずに策定しているところだ」と語った。
ここ数年、ハイテク業界と映画業界とは、たびたび不信感も抱きながらも接触を繰り返してきたが、このAACS LA(Licensing Authority)アライアンスで両者の関係は1つの頂点に達したことになる。ハイテク企業とコンテンツベンダーは過去にもコンテンツ保護システムを開発しているが、両者の足並みが揃うことはほとんどなかった。
同グループの開発する技術が各社の製品に採用されるまでには、まだ相当な量の作業が残っている。会員企業各社では、仕様策定作業は既に開始されており、今年中には同技術をリリースしたい、と話している。しかし、Secure Digital Music Initiativeなど、業界の壁を越えて行われたコンテンツ保護関連の提携が有望な合意内容を打ち出した後で破綻してしまった例もある。
それでもアナリストらは、幅広い分野からの企業が参加しているため、この提携の将来はIT業界単独で立ち上げた過去の構想より有望だ、と話している。
調査会社GartnerG2のバイスプレジデント、James Brancheauは、「今回はホームビデオ業界から二大企業が参加している」点を指摘し、「これはかなりの朗報だ。この組織の構成は好ましい」とコメントした。
今日のDVDが採用するContent Scrambling System(CSS)と呼ばれるコンテンツ保護システムは、1990年代後半にハッカーの手で破られてしまった。その後、ノルウェー人プログラマーのJon JohansenがDVDの複製を助けるDeCSSというプログラムを配付。米国の裁判所はこれに違法との判断を下したが、321 Studiosが出したDVD X-Copyなどの人気プログラムがその後すぐに登場してきた。
CSS同様、新しいAACS技術もディスクの作成時に付加され、ディスクに収められたコンテンツの「キー」を外すには専用のハードウェアもしくはソフトウェアが必要になる。著作権が権利消滅した場合は、スタジオが個々のキーを廃止することが可能で、CSSのようにキーが解読されたり誤って公表されても、システム全体は機能し続けることができる。
AACSはまた、現在普及している技術とは異なり、DVDに収められたビデオの利用方法を映画会社側が正確に指定できるようになる。つまり、たとえばある作品のファイルを(Microsoftの)Media Center OS搭載PC に保存し、それを家庭内のさまざまな場所におかれたテレビにストリーム配信して観ることや、あるいは携帯型の再生機器に転送して、外出先で観るといったことも可能になる。
同団体の参加企業各社は、MicrosoftのWindows Mediaのような他のDRMシステムやコンテンツ保護システムと、この新技術が補完し合うようになると説明している。
しかし、Microsoftには、高品位映画などのコンテンツを保護する独自のDRM技術がある。同社では、「VC-9」というWindows Media関連のビデオ技術についてその詳細をDVD Forumに提出し、同技術を標準として承認させるなど、異例の動きを見せていた。この背景には、いずれ映画会社に自社のビデオ関連技術や連動するDRMツールを採用してもらおうというMicrosoftの思惑があった。
AACS LAでは、この技術の仕様およびライセンス条件を今年末までのまとめ、コンテンツ業界、IT業界、家電業界のあらゆる企業にこれをライセンスしていくと語った。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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