近い将来、登坂や雨天といった状況や、あるいは個々人の体型に合わせて設計された自転車を探す日がやってきそうだ。これも、IT技術を積極的かつ創造的に使いこなすメーカーが出てきたおかげである。
自転車メーカーのTrekは、Opteronベースのワークステーションを利用して、ロードレース用バイクの設計に磨きをかけているが、この経験を通して学んだことが活かされれば、将来ショップの店頭に一段と多彩な形態の自転車がならぶようになるかもしれない。事実上すべてのメーカーと同じように、Trekではもう何年もワークステーションとCADソフトが自社のビジネスに不可欠なものとなっている。しかし、同社では現在、研究室で発見された成果を応用する取り組みを意識的に増やし、また研究室ではこれまで以上にさまざまなテストを行うようになっている。
「われわれは、横風などの具体的な条件に特化した自転車さえも考えている」というのは、Trekのシニアデザイナー、Michael Sanger。「いつの時代でも、何かしらできることはある。人類は車輪を進化させるのに数千年もかかった」と同氏は語った。
同氏の話では、顧客は現在自転車の色をカスタマイズできるように、将来はフレームの材質をどの種類のカーボンにするかを選べるようになるかもしれないという。
7月3日から始まるツール・ド・フランスには、このような自転車がいくつか参加し、はじめて道路を走る予定だ。Trekの商用製品ラインは、もともと同社が自転車競技界のスター選手、Lance Armstrongと彼の率いるUS Postal Service Teamのメンバーのために設計したロードレーサーから生まれたものだ。Armstrongらは今年のレースで、それぞれ7種類の自転車を状況に応じて使い分けることになっていると、Saganは述べた。
1990年代には、Trekは既成のフレームを同チームに提供していた。だが、同社は過去数年の間に積極的に設計に関わり、たとえばレースシーズンの前や期間中に、コンピュータ上でプロトタイプの風洞実験を繰り返すなどして、さまざまな工夫を重ねるようになった。そして、こうした実験や設計の工夫から生まれてきたのが、山登りやタイプトライアルなどの各ステージに合わせた専用フレームだった。コンピュータ上に再現した風洞実験は、CADソフト上で動作するシミュレーションだが、これにより設計者は重心移動やフレーム構成の変更がスピードや空気力学に与える影響を予想できるようになった。
タイムトライアルや登坂用につくられた自転車は、何年も前から存在していたが、しかしそのほとんどはは小さなメーカー製のもので、これらの製品を大規模なメーカーが販売することはなかった。
Trekでは、コンピュータシミュレーションで生み出されたアイデアを、実際の道路上でも実験している。もし、これら試みがうまくいった場合には、その後すぐに販売を開始するつもりだという。Saganによると、昨年のツール・ド・フランスで、Armstrongは軽量の山登り用プロトタイプに乗って第15ステージを走ったという。たまたまArmstrongが観客のバッグにこの自転車を引っかけてしまい、同選手は転倒。自転車のほうもこれでフレームが破損してしまったが、しかしこの偶然の事故以外は、概ねきちんと機能したため、同社は現在このプロトタイプを製品化している。
Trekは全社的にDellの製品を利用しているが、ただし設計部門だけはBoxx Technologies製のOpteronワークステーションを採用している。このマシンはエンターテインメント業界で使われているのと同じものだ。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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