マスターカード:「クレジットカードにリスクあり」 - (page 2)

Ong Boon Kiat(CNET News.com)2004年06月24日 10時00分

--しかし、セキュリティに対する懸念が高まっていることを考えると、バランスが崩れるとき、つまりクレジットカード会社がセキュリティを強化するために、利便性を犠牲にするときが来るのではありませんか。

 それはどうでしょうか。これからも技術革新が続くとすれば、クレジットカードで実現できることの範囲も再評価しなければなりません。状況は劇的に変化しており、次の兆候を予測するのは困難です。

--クレジットカードのセキュリティ技術のなかで、現在もっとも注目されているものは何ですか。

 目下、大手カード発行会社が力を入れているのはチップを搭載したクレジットカードです。債務移転の問題がありますから、各社とも積極的に取り組んでいます。

--債務移転というのは何ですか。

 発行会社がチップ搭載カードを用意しているのに、アクワイアラー(加盟店開拓/管理等を行う業者)にチップ対応のターミナルがない場合、支払拒否による債務はすべてアクワイアラーに移転されるというものです。逆に、アクワイアラーがチップ対応のターミナルを持っているのに、発行会社がチップ搭載カードを発行していない場合、支払拒否の債務は引き続き発行会社が負担することになる。つまり、チップ搭載カードのプラットフォームを定着させることが狙いです。

--アクワイアラーにチップ対応ターミナルの導入を強制しているようにもとれますが。

 それはアクワイアラーの自由ですが、私なら導入するでしょう。それに、発行会社も莫大な投資をするわけですから、これは協調的な努力です。

--これらの取り組みによって、消費者はどんな影響を受けるのでしょうか。

 チップ搭載カードにははるかに多くのセキュリティ措置が盛り込まれていますから、消費者にとっては安全性が高まることになります。また、債務負担の問題も消費者には関係がないので、消費者は最大の受益者といえるでしょう。消費者はこれまで以上に安全な支払手段を手に入れたことになります。

--クレジットカードのセキュリティといえば、写真入りのクレジットカードがそれほど普及していないのはなぜですか。

 実際、これは興味深いことです。オーストラリアのCitibankは「フォトカード」という商品を用意し、宣伝に力を入れていますが、普及は進んでいません。もちろん、カードに写真を載せるかどうかは発行元である金融機関の選択ですが、各社はそれなりの理由で、写真入りカードの導入を不要と考えているようです。

--というと?

 たとえば、プラスチックのカードさえあれば、基本的には写真でも何でも、好きなものを転写あるいは印字することができます。犯罪者の立場に立てば、写真の印刷もほかのデータと同じくらいにたやすい。パスポートの偽造が可能であるように、写真の偽造も可能です。

 また、人を介さずにクレジットカードを利用する機会が増えていることも、写真の必要性を減じる一因となっています。

 誤解しないでいただきたいのですが、私は写真入りカードに反対しているわけではありません。ただ、写真入りカードもやはり、魔法の解決策にはならないということです。

--このテーマの専門家として、セキュリティ問題と格闘しているアジアのITマネジャーに助言をいただけませんか。

 目下、米国ではシュレッダーが最新の流行となっています。シュレッダーが飛ぶように売れている。何を初歩的なことを思われるかもしれませんが、冗談でいっているわけではありません。米国人は今、秘密情報の扱い方を身につけつつあるのです。データに関する限り、「自分の視界にないから安心」とはいえませんから、これは非常に重要なことです。

 そういうわけで、私の助言は「オフィスにはシュレッダーを常備すべし」です。

--第2の助言は。

 適切な方針と保護手段を導入して、ノートPCのデータを保護することです。(今年はじめに)私がオーストラリア連邦警察を辞任する直前、オーストラリア政府は政府内のさまざまな部門を対象にノートPCの配備状況を検査しました。私の記憶では、その結果、約300台のノートPCが行方不明になっていることが判明したそうです。問題は、これらのPCにどんな情報が入っていたかです。ぎょっとするような情報がノートPCに残されていることがありますからね。この一件はよい教訓になるはずです。

--もう一つ、助言をするとすれば?

 とにかく質問をし、探求の手を休めないこと。ITマネジャーはIT部門が導入した措置がどんな影響を与えたのかを、他の部門に絶えず尋ねる必要があります。物事はどんどん複雑になっていますから、尋ねなければ真実は分からない。何度も何度も尋ねることで、はじめて影響の全体像をつかむことができるのです。

 また、何らかの措置を導入する際には、その措置の利点を現場のユーザーにはっきりと伝える必要があります。導入されつつある措置が最終的にはプラスの結果を生むのだということを、関係者に認識してもらわなければなりません--たとえ、それらの措置が一見不便に思え、投資回収率も明確ではないとしても、です。

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