[ニュース解説] Cisco Systemsが、Procket Networksの資産を買収する計画を発表した。8900万ドルの現金払いというのは破格の好条件かもしれないが、しかしこの買収でCiscoの核であるIPルータ戦略を疑問視する声が上がっている。
1999年以来、ベンチャーキャピタル各社はProcketに対して、合わせて3億ドル以上の資金を注ぎ込んできた。2000年には、同社はシリコンバレーのなかでも最も市場価値の高い企業の1つとされていた。しかし、その後Procketはかなりの財政難に苦しみ、米国時間17日のCiscoによる買収発表のしばらく前から身売りの噂が流れていたが、先週になって正式に自社を売りに出していることを認めた。多くのアナリストは、Procketの技術をこのような破格の値段で手に入れ、しかもそれがライバル各社の手に渡らないようにできるのだから、Ciscoにとってはそれだけの現金を投じる価値はあるはずだ、と述べている。
だが、ProcketはCiscoの製品群と直接競合するルータを製造していることから、Ciscoにとっては異例の買収といえる。CiscoはProcketに初期投資をしているものの、同社の経営陣はCiscoが競合技術を保有する企業を買収することはない、と何度となく公言していたからだ。またCiscoは、ほかのライバルに技術を渡さないためだけに、競合企業を買収することはない、との方針も長年にわたって貫いている。
一見したところでは、Ciscoが両方の規則を破ったように思える。だが、同社の経営陣は、Procketを買収する最大の理由は、その一環としてCiscoが雇用することになる130人のエンジニアだとしている。Procketのエンジニアの多くは、以前Ciscoで働いていたことがある。
Ciscoのルーティング技術グループ担当シニアバイスプレジデントのMike Volpiは、「Procketを買収した主な理由は、同社の人材だ。われわれは、才能にあふれた130人の人材を得ることになる。会社ごとまとめて買ったほうが、チームも維持できるので、1人ずつ獲得するより良いと思えた」と語った。
Volpiによると、CiscoにはProcketのルータを販売する意図はないが、これは新たに発表したCRS-1コアルータと重複するためだという。代わりに、CiscoはProcketのソフトウェアデザインの一部をCRS-1シリーズの各製品に統合することを計画している。
だが、CiscoによるProcketの資産買収からは、Ciscoが本音の部分では自社の新型ルータにそれほど満足していないという可能性も浮かび上がってくる。米国時間12日に行われた投資家向けの会議のなかで、Cisco最高経営責任者(CEO)のJohn Chambersは、同社が現在のルータ戦略に満足しており、ライバル企業を買収する場合もその人材獲得だけが目的だと語っていた。またVolpiも、Ciscoが今後も引き続きCRS-1を前面に押し出していくと述べた。
「今回の買収とCRS-1製品は全く関係ない。われわれには、CRS-1が現状のままでも十分成功するとの強い自信がある。同製品はこれまで通り7月に出荷される予定で、Procket買収によって手に入れた機能が同製品に統合されることはない」(Volpi)
Ciscoが、4年の歳月と5億ドルの資金を開発に費やしたCRS-1を発表したのは、つい先月のことだ。現在、顧客によるベータテストが始まっている同製品が、Ciscoの収益に貢献するのは来年以降のことだ。Ciscoは同製品用に全く新しいソフトウェアを開発し、IBMと協力して新しいチップセットまで開発した。
だが、CRS-1がリリースされると、すぐにその欠点を指摘する声もあがってきた。Procketの共同創業者であるTony Liは、先日行われたCNET News.comとのインタビューの中で、CRS-1はスケーラブルなルータを必要とする顧客には適していない、と語っていた。
「私が当初想像したよりはるかに大型だが、もう少し大きくても良い。ビジョンがあり、インターネットの成長を理解している顧客は、おそらくこの製品に落胆するだろう」(Li)
Liは、フラグシップ製品であるGSR 12000の開発が行われていた時期にCiscoに在籍し、またJuniper Networks初のコアルータ開発にも手を貸した経験を持つ。同氏は今年初めにProcketを離れている。
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