電子情報技術産業協会(JEITA)半導体幹部会は6月10日、2006年度以降の半導体共同研究開発プロジェクトに関して説明会を開催した。現在民間プロジェクトとして進めている「あすか」の一部を、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が進める「MIRAI」と統合する。
あすかはシステム・オン・チップ(SoC)の研究開発に必要な共通プラットフォームの構築などを目的として、2001年から活動を行っている。同プロジェクトは2006年3月で終了することから、2006年度以降の研究開発のあり方について半導体産業研究所(SIRIJ)に研究を委託しながら検討を重ねてきた。
JEITA半導体幹部会委員長を務めるNECエレクトロニクスの戸坂馨氏(左)と
SIRIJ前所長を務めたルネサス テクノロジの長澤紘一氏 |
あすかにはデバイスプロセス技術開発を行っている半導体先端テクノロジーズ(Selete)と設計技術開発を行っている半導体理工学研究センター(STARC)があるが、このうちSeleteをMIRAIと統合させ、あらたに「つくばR&Dセンター」を設立する。技術のモジュール化を進めるSeleteと要素技術開発を中心に行うMIRAIを統合することで、実用化へのスピードを加速したい考えだ。
つくばR&Dセンターでは45nm以降の先端プロセス技術開発を扱う。装置・材料メーカーにも参画を求めるほか、大学との連携も強化する。プロジェクトを強力に推し進めるために、リーダーに強い職務権限を与える方針という。「リーダーはぜひ産業界から出したいと考えている」(電子情報技術産業協会 半導体幹部会委員長の戸坂馨氏)
多様なビジネスモデルに対応
JEITAでは、プロジェクト運営に関して見直しを行う方針も明らかにした。これはプロジェクトに参加している企業のビジネスモデルが多様化しており、開発したい技術も企業によって異なってきたためだ。
今後は、先端技術開発を進める「先端コアプログラム」と、有志企業による「選択プログラム」の2種類を用意する。先端コアプログラムではリソグラフィなどの研究開発を進め、選択プログラムでは生産技術や新材料研究などを行う予定。この方式はつくばR&DセンターとSTARCの両方で導入するという。
そのほか、つくばR&DセンターとSTARCで開発された先端要素技術を標準化し、各社が標準準拠のファブ(工場)を展開することで、ファブネットワークをつくるという構想も明らかにされた。これが実現すれば、基本仕様・設計の相互利用が可能になり、応用製品分野の製品化で他国に先行できるとみている。
これらの共同活動プロジェクトの費用は、2006年から2010年までの5年間で総額1000億円規模となる見込み。半導体産業研究所 前所長(2004年3月に退任)の長澤紘一氏は、Seleteの研究開発費が5年間で700億円、STARCが同140億円、MIRAIが年間50億円程度と紹介し、「5年間で1000億円ということは、1社当たりの負担は軽くなるのではないか」とした。
JEITAでは今後、プロジェクトの具体的な計画立案をSIRIJに委託する。SIRIJは関係機関等と協力しながら、2005年3月までに計画を取りまとめる方針だ。
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