この3月期末、株式市場は空前の株式分割ラッシュとなった。東証上場企業(マザーズ市場含む)だけで見ても、3月期末に株式分割を実施した企業は43社と、昨年の13社から3倍以上に増えた。そうしたなか、主力株で1株を2株にする株式分割を実施して注目を集めたのが電通だ。ところが、株式分割権利落ち後の電通の株価は下降トレンドをたどっているのだ。今3月期も、デジタル家電景気やアテネ五輪による追い風で業績は好調な推移が見込まれている。なぜ、株価の動きが芳しくないのか。
電通は17日、前3月期の連結決算と、今3月期の連結業績見通しを発表した。前3月期の連結決算は、売上高1兆7491億円(前期比3.3%増)、経常利益471億円(同4%増)、純利益308億円(同34.5%増)と3年ぶりの増収増益となった。業績好調なデジタル家電や情報通信、自動車、化粧品・トイレタリーなどの業種で、新聞やテレビ、雑誌、ラジオの主要4媒体向けの広告出稿が増加した。また、厚生年金基金の代行返上による特別利益127億円を計上したことが純利益の大幅増加につながった。
今期の2005年3月期の連結業績については、アテネ五輪開催という追い風もあり、デジタル家電などの広告出稿が堅調に推移するのに加え、前期冷夏で不振だった飲料メーカーなどからの出稿回復も見込めることから、売上高は1兆8579億円(前期比6.2%増)と増収になるが、経常利益は480億円(同2%増)の微増、純利益は04年3月期の特別利益計上の反動から235億円と同24%減益を見込んでいる。
さらに同社は21日、2006年度(07年3月期)に連結売上高2兆円を達成するとした中期目標を発表した。04年3月期の実績は1兆7491億円、05年3月期の見通しは1兆8579億円。また、2006年度の連結営業利益については、04年3月期に比べて1.5倍の700億円以上に高めることを目標にしている。同社は、国内市場での着実な伸びに加え、北米や中国での大幅な売上増を見込んでいる。こうして電通は、足元の業績が好調なのに加え、積極的な中期経営計画も打ち出していることから、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)の面だけから見れば当然株価が上昇してもおかしくない状況にある。ところが、同社の株価は株式分割権利落ち後の3月26日の33万2000円から下落トレンドをたどり、2カ月後の5月25日には25万6000円と分割後の年初来安値を付け、23%もの下落となっているのだ。
この株価の下落傾向の背景について、市場関係者は「1対2株の株式分割によって5月20日から新株が効力をもち還流されることによる需給関係悪化への懸念を先取りするかたちで売りが先行した面もあるようだ。また、3月期末での株式分割の実施が発表されて以降、これを好感するかたちで50万円水準(株式分割前の株価)の株価が70万円近くにまで短期間に急上昇したことの反動もあるようだ」としている。
しかし、一方では市場関係者のあいだに「会社側の業績見通しは控え目すぎる。株価はそろそろ下値の限界に接近しており、今後は反転上昇に向かうのでは」との見方も浮上している。準大手証券では「会社側の業績見通しは、いつも通りの保守的な予想。4月単月では、売上高が前年同月比12.2%増となるなど早くも予算を大きく上回ってきている。さらに、ここへきてのシェア上昇も顕著。極端な天候の異変や大規模なテロ事件でも起こらない限り、期中に業績が上方修正される可能性は濃厚」との見方をしている。
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