パワードコム白石社長、最後の決算発表は120億円の赤字

藤本京子(CNET Japan編集部)2004年05月18日 20時51分

 2003年4月に東京通信ネットワークとの合併、2004年3月にフュージョン・コミュニケーションズとの電話事業の統合とドリーム・トレイン・インターネット(DTI)との個人向けインターネット事業の統合を発表するなど、2003年度中に相次いで事業統合を行ったパワードコム。同社の2003年度決算は、営業収益が1693億円だが経常損益は120億円の赤字となった。

 120億円という経常赤字について、パワードコム取締役社長の白石智氏は「業務の効率化やコストダウンを進めた結果、下期の経常損益は大幅に改善した」としている。上期の経常赤字が72億円であるのに対し、下期は48億円にとどまったためだ。さらに、下期の経常損失にはNTT東西への接続料事後精算の約24億円が含まれているため、「実際には下期の損益は24億円」と白石氏はいう。

 営業収益1693億円の内訳は、電気通信事業が1470億円(音声伝送が536億円、データ伝送が470億円、専用線が438億円、その他26億円)で、附帯事業が223億円となった。

最後の会見に臨むパワードコム取締役社長の白石智氏

 法人向けデータ通信事業では、主力製品であるPowered Ethernetが順調に拡大した。昨年度の獲得回線数は約6500回線で、累計で約1万4200回線となった。昨年末には、1Gbpsまでの大容量高速アクセスのメニューを追加したり、インターネットVPNとの接続サービスやNTT東西フレッツサービスとの接続サービスを開始するなど、多様なアクセス回線の利用が可能となった。さらなる利便性の向上をめざし、同社ではインターネットゲートウェイサービスや優先帯域制御(QoS)サービスを開始する予定だという。

 電話事業については、中継電話事業の東京電話が約24億円の営業損失となったが、「接続料事後精算がなければイーブンだ」(白石氏)という。同事業の収益は2002年度の531億円から2003年度は468億円と前期比12%減だが、これは「トラフィック減による回線単価の減少と、マイライン登録回線の減少によるもの」という。ただしマイラインについては、「個人向けは減少したが法人向けは増加した」と白石氏は述べている。

 直加入電話事業については、固定電話発携帯電話着サービスの開始により回線単価が24%増加したという。IP電話事業は、個人向けのPOINT Phoneサービスを2003年5月に開始、法人向けのセントレックスサービスを同8月に、多回線IP電話サービスを同12月に、コンタクトセンターサービスを同12月に開始するなどさまざまなサービスを展開しており、「今後はフュージョンとの事業統合を通じてIP電話のトップランナーをめざす」(白石氏)としている。

 個人向けインターネット事業は、ブロードバンド会員数が着実に増加し、会員ID数が2002年度の8万3000から2003年度には11万5000となった。収益についても2002年度の46億円から2003年度は58億円と、前期比26%増となっており、今後はDTIとの統合で更なる規模拡大をめざすとしている。また、「光ファイバーでデータ・音声・映像の3つの情報を提供する」としており、テレビ視聴者向けIP放送およびビデオ・オンデマンドサービスの提供をめざし、今年中にはトライアル実施を計画しているという。また、光ファイバーを通じてコンテンツを直接ダウンロードし、DVDメディアに記録するというDVDダウンロードサービスも、東京電力や東芝と共同でトライアルを実施する予定だ。

 パワードコムでは、18日の取締役会において取締役の新任候補者3名を内定しており、社長の白石氏、取締役会長の種市健氏、専務取締役の佐藤紀男氏の3名は退任となる。新任取締役は、すでに顧問として任命されている北里光司郎氏(会長候補)、同じく顧問の中根滋氏(社長候補)、山川昭男氏(現執行役員常務設備本部長)の3名が内定している。

 パワードコム社長として最後の会見となった白石氏は、会見の最後に「株主や従業員に感謝したい。(通信業界については)素人の私をよく支えてくれ、大変恵まれた環境だった」と、感謝の意を述べた。

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