日経平均株価は、4月26日に年初来高値をつけて以降、同27日から大型連休を挟んで5月10日まで6営業日続落となり、短期間に11%を上回る非常に厳しい下落に見まわれている。この間日立、NEC、ソニー、NTTドコモなど主力ハイテク関連銘柄もほとんどが急反落となり、下落傾向を加速している。こうして大半の銘柄が調整を強いられる極端な反落相場のなか、逆行高を演じているハイテク株がある。それはTDKだ。
TDKの株価は、4月26日に安値7360円をつけて以降、平均株価が続落していた6営業日のあいだもほぼ上昇を続け、5月10日には一時8070円の高値をつけた(10日終値は、後場の全体相場の急落に押され7810円)。日経平均株価が11%以上も下落した6営業日のあいだに、TDKの株価は9%以上もの上昇をみせたことになる。
TDKの株価上昇のきっかけとなったのは、4月28日に発表された前3月期の連結決算と今3月期の連結業績見通しが好調な結果となったことだ。ハードディスク装置用GMR(大容量磁気抵抗)ヘッドの需要拡大と、デジタル家電向け部品の需要拡大を主因に、前3月期の連結経常利益は、前々期比3.07倍の556億円、純利益も同3.5倍の421億円と大幅増益の実績を残した。さらに、4月からスタートした今3月期も、GMRヘッドの需要はやや伸び悩む見通しながら、パソコンやデジタル家電ハードディスク駆動装置(HDD)向け部品需要拡大予想から、経常利益620億円(前期比11%増)、純利益465億円(同10%増)と連続増益の会社側見通しとなっている。
こうした前3月期の好決算、今期3月業績見通しを受け、証券会社による投資判断の引き上げが相次いでいる。日興シティグループ証券では、投資評価を従来の「2H(中立)」から「1H(強気)」と引き上げ、目標株価を9500円(従来8000円)に置いたほか、ゴールドマン・サックス証券も「アウトパフォーム(強気)」へと投資判断の1段階引き上げを実施した。UBSは格付けを「ニュートラル(中立)」から「バイ(買い)」とし、UFJつばさ証券では格付けを従来の「B」から最上級の「A+」に2段階引き上げ、目標株価を1万円(従来8000円)に置いている。
さらに、大和証券投資情報室は5月7日付の同社のレポート「マーケットウオッチ」で、注目株としてTDKを取り上げている。同証券では、「今3月期のGMRヘッド需要鈍化は避けられないものの、市場の裾野拡大から鈍化は限定的で、来期以降は再拡大局面に入る」と予想している。同証券グループの調査機関である大和総研では、今3月期のTDKの連結経常利益について、会社側見通しを80億円上回る700億円(前期比25%増)、来3月期790億円と予想している。
今年に入って多くのハイテク株が継続的な上昇をみせ、ほとんどの銘柄が相次いで年初来高値を更新するなかで、TDKの株価は7000円から8000円のあいだのボックス相場に止まっており、1月20日につけた年初来高値の8350円を更新できない状態が続いていた。現在のTDKの株価水準は、連結予想PER(株価収益率)でみても22.4倍と割高感もないことから、年初来高値の8350円を突破して、なお現在の逆行高の勢いが続くようならば、中期的には1万円を目指す展開も期待できそうだ。
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