ここ10年で一般に普及した携帯電話。その機能も単なる通話だけでなく、メールやウェブ、デジタルカメラや赤外線通信などさまざまなことが実現できるようになっている。たしかに我々の生活は便利になったが、迷惑メールなど新たな弊害が生まれているのも事実だ。このような状況を踏まえ、NTTドコモは携帯電話が社会に与える影響について研究に乗り出した。
NTTドコモは4月1日、携帯電話等がもたらす社会・文化的影響を研究する「モバイル社会研究所」を設立したと発表した。所長には東京大学名誉教授の石井威望氏が就任する。
NTTドコモ モバイル社会研究所 所長に就任する石井威望氏 |
研究所はNTTドコモの中に置かれるが、組織はスタッフも含めて5、6名程度になる予定。研究所がテーマを選定し、実際の研究は国内外の専門家に委託する形をとる。研究員とはオンラインで連絡を取り合う形を取り、「場所にとらわれないバーチャルな研究体制で行う」(石井氏)という。
NTTドコモは研究委託費などを提供する。予算は年間2〜3億円程度となる見込み。ただし「中立的な立場から研究を行ってもらう。テーマの選定なども研究所に一任する」とNTTドコモ 取締役 経営企画部長の辻村清行氏は話す。研究成果は論文やシンポジウムなどを通じて広く公開していく方針だ。
今回の研究所設立の趣旨について辻村氏は「新しい技術が登場すると、必ず負の面が生まれる。NTTドコモとしても最小限に押さえようとしているが一定の限界があり、負の面を正面からとらえる場所を作りたかった」と説明。所長に就任する石井氏も「携帯電話の正しい使い方というものが確立されておらず、困惑している人が多い。新しい分野のため、研究が進んでいないことが最大の問題だ」と話す。携帯電話の影響に関する研究はまだ少ないことから、将来的には世界的に見て中核的な研究所になるのではないかと辻村氏は期待を寄せた。
研究分野は大きく4つに分かれる。携帯電話の利用マナーなど社会的・文化的影響の研究、迷惑メールやデジタル万引きなどの犯罪を防止するための法律・制度面の研究、携帯電話等のモバイルコミュニケーションの普及が産業にもたらすインパクトに関する研究、社会的インフラとしての携帯電話の役割や災害時の情報伝達・社会心理の研究だ。
研究所の理事にはそれぞれの専門家として一橋大学大学院商学研究科長の伊藤邦雄氏や帝塚山学院大学人間文化学部教授の香山リカ氏など8名が就任する。理事会では研究テーマの決定や年間事業計画の審議などを行うという。
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