経営統合発表でマネックス証券の株価はどうなる

 インターネット取引専業のマネックス証券の株価が急騰した。19日、同業の日興ビーンズ証券と経営統合すると発表したことを好感したものだ。マネックスの株価は、経営統合発表直前19日の終値6万1800円から24日の高値まで、2日連続のストップ高を含み、3日間で32%という異常な買い人気を集めた。

 発表によると、8月上旬に共同持ち株会社「マネックス・ビーンズ・ホールディングス」を設立し、両社が完全子会社となる。マネックス1株に持ち株会社1株、ビーンズ1株に持ち株会社3.4株を割り当てる。マネックスの株式は上場廃止となり、持ち株会社がマザーズへの上場を予定。また、2005年中に合併予定で、将来的には東証1部上場も視野に入れている。統合によって預かり資産は1兆1000億円となり、ネット証券ではイー・トレード証券の1兆383億円を上回り最大となる。

 しかし市場関係者のあいだでは、この株価の急騰ぶりに疑問の声も上がっている。外国証券のアナリストは「“負け組み同士の持たれ合い”といわれても仕方のない組み合わせ。マネックスは2003年末で約37億円の累損を抱えている。一方、ビーンズは昨年10〜12月期にネット証券主要5社がすべて最高益を更新するなかで1社だけ経常減益というカヤの外状態に置かれていた。預かり資産がネット証券トップというのは収益力の向上に対してあまり意味を持たないのでは」と厳しい見方をしている。

 ビーンズは日興コーディアルグループのネット証券部隊として設立されたが、親会社の日興に対する依存体質が災いして業績は低迷している。一方、マネックスは外資系金融機関出身の若手起業家、松本大氏がソニーの出資を得て華々しく設立された経緯がある。しかし、こちらもいまひとつインパクトの強いセールスポイントを打ち出せずに業績が伸び悩んでいた。

 両社の業績が低迷している背景について市場関係者は「現在のネット証券業界は、株式売買委託手数料の無料化が進展するなど、手数料引き下げ合戦が激化して、完全に生き残りを目指した消耗戦に入っている。そうした環境なかで、この2社はそうした競争からは一線を画して、ある意味個人向け金融サービスの理想の姿にこだわってきた。しかし、鳴り物入りで日本の個人向け営業に新規参入した外国証券が相次いで撤退を余儀なくされたように、長期的な視野で個人の資産運用を受け入れる土壌はまだ日本にはできていない。したがって、このままでは統合新会社の収益立て直しにはかなりの時間がかかりそうだ」としている。

 さらに、東証は23日、今回の経営統合について「マネックス・ビーンズ・ホールディングスは8月上旬の上場日から“不適切な合併等”の項目に該当して(上場基準審査の)猶予期間に入る」と発表した。実質的な存続会社がマネックス証券ではなく、現在非上場の日興ビーンズ証券であると判断したためだが、東証の規定によれば「猶予期間の3年間は引き続き上場が維持され、猶予期間内に新規上場審査基準に準じた審査を受けることが可能」となっており、共同持ち株会社の営業活動に支障はない。マネックスでは「早期に新規上場審査に準じた審査を経過できるように万全な体制で準備を行っていく方針」としている。ただ、東証の指摘を待つまでもなく、今回の経営統合は背水の陣に近い状態であり、拙速な面があったことは否定できそうにもない。

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