ミネソタ州で行われているMicrosoftに対する反トラスト訴訟で、証拠として取り上げられた電子メールのメッセージは、ふだんめったに見られない同社幹部の自社ビジネスに対する考え方や、投資家を勧誘する際のやり方を垣間見せるものだ。
今週ミネアポリスで始まった裁判で、州の住民を代表して集団訴訟を起した弁護団は、MicrosoftがWindows OSやOfficeアプリケーションソフトをユーザーに対して不当な値段で販売したと主張している。なお、この訴訟は4億2500万ドルの損害賠償を請求するもので、Microsoftがまだ和解に達していない訴訟のひとつである。
Microsoftのグループ・バイスプレジデント、Jeff Raikesは、1997年に億万長者の投資家Warren Buffettに宛てて送った電子メールのなかで、自社への投資を検討するよう依頼していた。Wall Street Journalが最初に伝えたこのRaikesのメッセージには、Microsoftが高い収益を上げているOS市場の独占状態を、「有料道路」に喩える者もいると書かれていた。全世界でわずか100〜150人のセールス担当者しかいないため、「これは90%以上のマージンがとれるビジネスだ」と同氏はこのメッセージに記している。
BuffettがCEO(最高経営責任者)を務めるBerkshire Hathawayは一種の持ち株会社で、保険会社Geicoなどを所有するほか、American Express(11.8%)やWashington Post(18.1%)、Coca-Cola(8.2%)などの大企業の株式を保有している。Buffettは、世界で最も成功を収めた投資家のひとりだが、IT関連企業の銘柄を嫌うことでもよく知られている。
Raikesは、Microsoftのおかげで自らの資産は数億ドルを優に上回ると述べ、Buffettを説得しようと試みた。「パソコンは替え刃を必要とするかみそりのようなもので、我々はパソコン1台あたりの代金をもとに総売上を計算する」とRaikesは記している。「1996会計年度には、およそ5000万台のパソコンが販売されたが、Microsoftの収益は1台あたり平均およそ140ドルで、これを掛けると総売上は70億ドル・・・。あなたが投資している他の優良企業と比べて、我々のビジネスが飛び抜けて理解し難いものだとは思えない」(Raikes)
一方でRaikesは、MicrosoftとCoca-Colaでは、新興のライバル企業から身を守るための堀の大きさに違いがあることを認めている。「Coca-Colaの場合は、炭酸飲料を飲む消費者の嗜好が瞬く間に変わってしまうことはないだろうとかなり自信を持っていられる。特に相手がCokeならなおさらだ。これに対して、ITの世界ではもっと頻繁に"パラダイムの転換"が起こっており、これまでのリーダー的な存在が新たな競合の登場で立場を失うといったことがある。たとえば、コマンドライン主体のユーザーインターフェイス(CUI)がGUIにとって変わられたり、インターネットが急激に普及したり、といったことだ」(Raikes)
これに対するBuffettの答えは、「Coca-Colaと比べてもMicrosoftのロイヤリティー収入のほうが優れている。私はそうした形の売上を高く評価する。ただし、私にはさまざまな確率を評価できる気がしない。万一、無理矢理頭に拳銃を押し付けられて、Microsoft株を買うか買わないかを決めろといわれた場合は無論買いと答えるだろう。しかし、今後20年間に成長する確率は80%だろうか、それとも55%かなどと考えるのは、IT株の場合馬鹿げたことだ」というものだった。
このやり取りがあった後も、 Buffettは結局考えを変えなかった。同氏は引き続き成功を収めた企業になくてはならない「経済的な堀」の話を続けた。今月リリースされた、Berkshire Hathawayの2003年度版の年次報告書のなかで、Buffettは依然としてさまざまビジネスを買収することに興味があるが、ただし仕組みの簡単なものに限ると述べていた。「テクノロジーがたくさん絡んだものは、我々には理解できないだろう」(Buffett)
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向け に編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス