「MyTunes」は、ネットワークでつながったiTunesソフトウェアのユーザー同士が楽曲をダウンロードできるようにするプログラムだが、この画期的な技術が昨年ネット上に姿を現した時、いずれは消え去るだろうとの予感があった。
人気の高いこのソフトウェアがネット上からほぼ姿を消し、作者のサイトも活動停止状態にある。だが今回は、怒れるレコード業界や、争いを嫌うAppleが行動を起こしたわけではない。トリニティカレッジ2年生のBill Zellerは、昨年余った時間を利用して2週間もかけずにこのプログラムを書いてしまった人物だが、同氏によると突然コンピュータをクラッシュさせてソースコードをなくしてしまったのがこのプログラムの消滅の原因だという。
「2番目のバージョンをリリースしようというときに全部なくしてしまった。ネット上でもう一度公開するかもしれないが、アップデートをすることはない。書き直すのは嫌だ」(Zeller)
ZellerのMyTunesソフトウェアは、最も厳重に管理されたソフトウェアでも不正な目的のためにユーザーが手直しできてしまうことを示す顕著な例だ。Appleは苦労の末にレコード業界の著作権を忠実に支持するベンダーとしての地位を築き上げており、また不正なファイル共有を可能にしていた自社ソフトウェアの機能を排除する措置をとったこともある。
MyTuneは、家庭内やオフィスビルなど同じネットワーク上にあるMac同士が、相手のMacのなかにある楽曲を検索したり、聴いたりできるようにするiTunesの機能を活用していた。しかし、iTunesが提供しているのがストリーミング機能だけなのに対し、MyTunesは曲をキャプチャして、MP3ファイルで保存できるようにしてしまった。
なお、この機能はAppleのiTunes Music Storeで購入した曲では使えない。iTuneで購入した曲はコピープロテクトがかかり、別のコンピュータへコピーしようとするとパスワードの入力を求められる。
昨年、iTunesへの支持を獲得すべく膨大な時間を費やして音楽業界に働きかけてきたAppleは、MyTunesがリリースされた際にはコメントを発表せず、また今回の件でもコメントを求めたが回答していない。なお、Appleでは先にMacintoshの所有者がiTunesの楽曲共有機能を活用してインターネット経由で楽曲を共有したのを受け、この機能の一部に制限を加えている。
MyTunesは、1つのネットワーク上でしか機能しないため、インターネット上の広い範囲で自由に曲を共有できる機能はなかった。しかし、ユーザーからの逸話が物語るように、数十人から数百人の人々が接続している企業内ネットワークで楽曲を共有するために、このソフトが広範に利用されていたことは明らかだった。
全米レコード協会(Recording Industry Association of America:RIAA)は、KazaaやGroksterといったファイル交換用ソフトの取り締まりを進めてきているが、そのRIAAもMyTunesがリリースされた際にはコメントしなかった。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向け に編集したものです。
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