IBMより優位な点は「シンプルさとパートナー戦略」:BEAスコット・ディッゼン氏に聞く - (page 3)

藤本京子(CNET Japan編集部)2004年03月03日 17時35分

メインフレーム市場を探る

---ところでターゲットとしている市場についてですが、標準を推進するということで、メインフレームからオープンシステムへと移行する企業もターゲットにしようということでしょうか。

 まずはっきりさせておかなくてはいけないのは、BEA製品はメインフレーム上でも動くということです。メインフレーム上で動くLinuxもありますし、そのようなシステムはオープンと呼んでもいいのではないでしょうか。BEAが真のターゲットとしているのは、ウェブやインターネット世代のアプリケーションです。現在ではほとんどの企業がWebサービス志向のアーキテクチャを考えており、そうなると選択肢はWebLogicやWebSphere、または.NETとなるわけです。市場は非常に大きく、この動きは今後10年続くでしょう。メインフレーム上やWindowsのデスクトップ上だけで動くアプリケーションからウェブで動くアプリケーションへと、市場がシフトしているのです。多くの顧客はまだメインフレームを抱えていますし、Windowsのアプリケーションも使っています。BEAの役割は、こういったレガシーともうまくやっていくことだと考えています。

 ただ、Javaやウェブ上の処理をメインフレーム上で行うケースはまれです。その理由は、こういった処理はUnixやLinux上で行う方がずっと安価なためです。JavaやXMLでは、Intelチップの入った小さなサーバが巨大なIBMマシンよりもずっと高速な処理を行うのです。ですので、最近ではメインフレームの周りにUnixシステムを多数設置し、Unix上でウェブ層の処理をさせ、COBOLアプリケーションをメインフレームに任せるといった利用方法をよく見かけます。

---メインフレームはなくならないとお考えですか。

 なくならないでしょう。ビジネスクリティカルなCOBOLアプリケーションは現在でも必要なのです。40年以上同じアプリケーションを使っている顧客にもよく会います。これがあと何年使われるかはわかりませんが、私はメインフレームがあと30年はなくならないと考えています。同時に、ビジネスのロジックはメインフレームから遠ざかっているのも事実です。というより、新しいビジネスロジックがどんどん立ち上がり、それがメインフレーム中心のものではなくなっていると言った方が正確でしょう。インターネットの登場やウェブの活用もこの動きのひとつですし、Windowsの登場もそうです。

 Javaにしても、メインフレームで動くとはいえ、通常はそれ以外のシステム上で動かすほうが多いですよね。IBMのWebSphereにしても、Intelチップが搭載されたLinuxマシンなどで走っている数の方がIBMのメインフレーム上で走っている数より多いのですから。

 ただ、先ほども言ったとおり、メインフレーム上でLinuxを搭載するケースもあります。私はこのようなメインフレームはオープンシステムと呼んでいいと考えています。つまり、メインフレームでも他のシステムと同じようにオープン化が進んでいるといえるでしょう。ただ、Intelベースのシステムと比べれば高価ですけどね。

---富士通や日立製作所など日本で強いとされるメインフレームベンダーも、InterstageやCosminexusといったアプリケーションサーバを提供しています。このような企業はすでにメインフレーム時代の顧客を多く抱えており、そういった顧客がオープン化を進めてウェブアプリケーションサーバを取り入れようとした場合、メインフレームベンダーでかつアプリケーションサーバを提供している企業は顧客獲得に有利だと思うのですが。

 確かに時々そういったベンダーの製品を見かけることはありますね。ですが、例えば富士通はBEAのパートナーでもあります。富士通のInterstageは確かに競合製品となりますが、WebLogicを選択する顧客が多いのも事実で、パートナーとしての関係はうまくいっています。20%以上のシェアを保つ製品はSIerも積極的にサポートするため、顧客はシェアの高い製品を選ぼうとします。この市場ではWebLogicとWebSphereがそれぞれ30%程度のシェアを握っており、Interstageのシェアは20%にはほど遠いのが現状です。もし富士通が世界的な戦略を立てInterstageのシェアを20%にまで高めようとするのであれば、違ったシナリオを描けるかもしれませんが、現在の1桁台のシェアでは長期的に見てあまり成功するとは考えられません。

 市場シェアを握ることは非常に重要なのです。SIerがシステムを構築し、テストするには莫大な資金が必要です。シェアの低い製品までテストする余裕はないでしょう。シェアが高ければ顧客のニーズに応えるため、どうしてもテストが必要となります。市場シェアを握るプラットフォームをサポートすることは、(SIerにとって)コスト削減にもつながるというわけです。

---WebLogicが高い市場シェアを獲得できた理由はどこにあるのでしょう。

 いち早くこの市場に参入したからでしょう。競合のWebSphereよりも約2年早く市場参入しています。また、J2EEの定義にも深く関わっており、J2EEの父ともされています。このように市場参入が早かったこと、すばらしい技術を市場に提供したことに加え、パートナーに恵まれたことも成功の秘訣でしょう。

 BEAは、IBMより他社とのパートナー関係を結びやすい状況にあります。BEAのパートナーとして、例えば日本にはNECが、世界的にはIntel、Hewlett-Packard、Accentureなどが存在しますが、これらの企業は別分野でIBMと競合する企業です。実際のところ、IBMと競合しない企業は存在しないかもしれません。つまりIBMは、他社とパートナー関係を結んでWebSphereのシェアを伸ばすことができないのです。OS2やDB2、Component Broker、TXSeries、Lotus Notesなどが大きな市場シェアを握ることができないのも、同じような理由からではないでしょうか。(WebSphereに関しても)歴史は繰り返すということになればいいのですが(笑)。しかしIBMは大変優秀な企業ですから、気は抜けません。

 ただ、WebLogicの後を追ってWebSphereが市場参入したのは両社にとっていいことだと思います。市場が活性化しますし、両社とも同じ方向に進んでいるため、この方向に進むのが正しいという説得力も出てきます。WebLogic成功の要因のひとつとして、WebSphereの描く未来像がWebLogicの描くものと同じだったということもあると考えています。BEAの顧客は、「BEAはIBMの一歩先を進んでおり、しかもIBMはBEAと同じことを主張している。つまりBEAの製品を選べば間違いないだろう」と考えたでしょうから。万が一顧客が途中でBEA製品からIBM製品に乗り換えるとしても、IBMが同じ方向に進んでいる限りリスクは少ないですしね。その逆もしかりで、顧客に選択肢があるというのは重要です。

 選択肢という意味では、Microsoftは弱いですね。.NETに代わるものはありませんから。.NETでシステム構築してしまうと、ずっと.NETで行くしかありません。Javaを採用すれば、選択の幅がずっと広がります。今後もJavaの市場は広がっていくと思いますよ。

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