オープンソースの採用で共食い状態?--ソフトウェア企業のジレンマを探る - (page 2)

Martin LaMonica(CNET News.com)2004年03月01日 10時00分

オープンソースの普及で痛い目に?

 企業データセンターのコア業務に初めて採用されたオープンソースソフトウェアはLinuxサーバだった。しかし、データベースやアプリケーションといった分野でも、オープンソースソフトウェアは急速に力をつけてきている。Linux人気は特にMicrosoftにとって大きな脅威となっているが、オープンソースの普及は他の企業のプロプライエタリソフト事業も脅かすものになるかもしれない。

 IBMはオープンソース運動を草の根から企業にまで広めた立役者だが、同社もプロプライエタリソフトの販売とオープンソースサービスの提供という2本立てのアプローチを採用している。同社の経営陣はオープンソースソフトウェアがいずれIBMの有償ソフトウェアの機能に追いつき、追い越す可能性があることも認めている。

 「たしかにリスクはある。しかし率直にいって、上り調子のものをしゃかりきにつぶそうとするのはエネルギーの無駄だ。誰も市場には勝てない」とIBMソフトウェアの技術戦略ディレクターDoug Heintzmanはいう。

 1998年にApacheを支持し、自社のウェブサーバソフトを放棄したIBMは今、何百万ドルもの予算と1000人のスタッフをオープンソースプロジェクトにつぎこんでいる。オープンソースコミュニティに関与することは、IBMが自社の多彩な製品の統合基盤として期待をかけているグリッドコンピューティングなど、さまざまな分野の標準化を進める上でも役に立つ。Eclipseベースの開発ツールなど、IBMが提供する有償ソフトウェアは無料ソフトウェアよりも豊富な機能を提供している。

 先日、昨年度のLinux関連売上が25億ドルに達したことを発表したHPは、オープンソースのソフトウェアに関するコンサルティングサービスを開始した。対象となるソフトウェアにはデータベースのMySQL、JavaアプリケーションサーバのJBoss、ウェブサーバのApache、Linuxなどが含まれる。

 HPにとって、このサービスはBEA SystemsやOracleとのパートナーシップを緊張させるものになるかもしれない。しかし、たとえプロプライエタリソフトの利用が伸びつづけたとしても、オープンソースが大きな商機をもたらすことはまちがいないとHPのLinux担当チーフ・ストラテジストMike Balmaはいう。「たしかに重なり合う部分はある。しかし市場にはすべてのプレーヤーを吸収する余地がある」(Balma)

 大企業がプロプライエタリとオープンソースのバランスを探っている間に、いくつかの純粋なオープンソース企業が有望なライバルとして頭角を現してきた。Red Hatや昨年Novellが買収したSuSE Linuxは、OS市場でのLinux人気に乗って成長した企業だが、Linux以外のソフトウェア分野にも商機はあるだろう。

 JavaサーバソフトウェアメーカーのJBoss Groupとオープンソース・データベースメーカーのMySQLは、目下急成長中のオープンソース企業だ。この2社はソフトウェアを無料で提供し、サポートやその他のサービスから利益を得るという「プロフェッショナル・オープンソース」アプローチを採用している。

 こうした企業は「自前主義」をなかなか捨てられずにいる大手競合企業と異なり、プロプライエタリ製品との兼ね合いに足をひっぱられることはない。

 しかし、オープンソースのミドルウェア、データベース、及びデスクトップシステムは、ビジネスソフトウェア市場のごく一部を占めるにすぎない。エンタープライズ向けソフトウェアの場合は導入後の維持コストが導入時のライセンス料をはるかに上回るが、この点でオープンソースソフトウェアはこころもとないと有償ソフトウェア企業は主張する。また、IBMやMicrosoftのような資金力のある企業には、研究開発に投資する余裕もある。

 「(MySQLに)エンタープライズ機能が追加されるとき――それが正念場だ」とMicrosoftのSQLサーバデータベース製品管理ディレクターThomas Rizzoはいう。「今の彼らはまだ、教科書をコピーしているだけにすぎない」

 現在SCOグループとIBMの間で進んでいる訴訟からも明らかな通り、オープンソースソフトウェアには法的リスクも伴う。オープンソースの利用を強化しようと考えている企業は、たとえその製品に法的保護プログラムがついていたとしても、法的側面を十分に調査し、特許や著作権関連の訴訟から身を守る必要があるとGartner GroupのアナリストGeorge Weissはいう。

 「コードが著作権を侵していないと100%保証するのは事実上不可能だ。訴訟の面で、今日のソフトウェアは厄介な存在になっている」(Weiss)

 この点はSabreがオープンソースソフトウェアの導入を検討していたときも強調された。Sabreの戦略立案担当シニアバイスプレジデントBob Offutt は、IT部門の幹部と法務担当者の会議が、オープンソース導入の「扉を開いた」と振り返る。話し合いを重ね、訴訟の脅威が存在することを了解した上で、同社はオープンソースに関する方針を定めた。

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