総務省は、携帯電話の番号ポータビリティ制度を導入するべきとの報告書をまとめる方針だ。これは、総務省が2月26日に行った携帯電話の番号ポータビリティのあり方に関する研究会で明らかにされたもの。
番号ポータビリティ制度とは、携帯電話の利用者が契約する事業者を変えても、同じ番号をそのまま使えるというもの。研究会では2003年11月から導入の是非や実現方法について議論を進めてきた。当初は携帯電話事業者からの反発が強かったが、利用者が受けるさまざまなメリットを考えると同制度の導入が望ましいという結論になった。
第5回研究会の様子 | |
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総務省がまとめた報告書の骨子案では、同制度の導入がもたらす便益として、利用者がより自由に機種やサービスを選べること、番号変更通知などの手間がなくなり利便性が向上すること、事業者間の競争が促進されることでサービスの充実や料金の引き下げが起こることなどを挙げている。
導入に必要な設備投資については、番号ポータビリティの利用者と携帯電話事業者が負担することになりそうだ。ただし、具体的な金額などは決まっていない。ツーカーセルラー東京取締役管理本部長の松下英明氏は「負担方法についてはもっと議論が必要だ。研究会の報告書の中であまり限定して書くべきではない」と話す。また、立教大学法学部教授の舟田正之氏は「利用者への課金額を決めてしまえばカルテルになる」と指摘し、事業者がそれぞれ決めるべきことだとした。
実際に必要な設備投資はどのくらい?
総務省が以前行った試算によると、各社契約者の10%が番号ポータビリティを利用した場合の設備投資額は915億円。今回の会議では、システムの機能を削った場合にどれほど投資額が下がるかという試算も紹介された。
NTTドコモ取締役経営企画部長の辻村清行氏は、
について紹介。それぞれ(1)は16億円、(2)は15億円、(3)は15億円のコスト削減効果があり、合計で46億円の削減が可能だとした。
その上で辻村氏は、「各社契約者の10%が番号ポータビリティを利用するとしても、約800万人の利用者がいることになる。これだけの人が安心して利用できるシステムを作る必要がある。投資を安くすることだけを考えると足下をすくわれる危険性があり、バランスを考えることが必要だ」と話す。
ただし、設備投資額の試算については「全体の金額だけではなく4事業者の個別費用など内訳を示してほしい」(東京大学大学院新領域創成科学研究科教授の相田仁氏)、「結局は利用者が何らかの形で負担するものであり、利用者が納得できる説明が必要だ」(早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授の三友仁志氏)などの意見も出された。
導入スケジュールについては、3月末に開かれる次回の会議で話し合われる予定。研究会の議長を務める東京大学名誉教授の齊藤忠夫氏は「マイラインの導入時を参考にすると、システムの構築に2年程度かかるのではないか」との見通しを示した。
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