いまから25年前、当時17歳だったGreg Raleighは、少壮のエンジニアとして、ラジオ番組の放送に使う真空管をつくりながら、夏休みを過ごした。
そのRaleighは現在、Airgo Networksという会社の最高経営責任者(CEO)を務めている。同社は、無線ネットワーク経由での高品位動画の送信に役立つチップを開発する新興企業だ。
今年42歳になる同氏の会社は、シリーズCの資金調達で集めた2500万ドルという潤沢な資金があり、Raleighはおそらく17歳の頃よりもたくさんのお金を稼いでいるはずだ。しかし、もっと重要なのは、彼の立ち上げたベンチャー企業に追加資金があり、これを使えばMIMO(Multiple-Input-Multiple-Output)技術をベースにしたWi-Fiチップの大量生産に乗り出せるということだ。
Airgoによると、このチップを利用したネットワーク機器は、現行のWi-Fi標準ベースの機器と互換性があり、しかも最大転送レートを2倍以上引き上げられるという。そして、この技術を導入した企業ユーザーは、アクセスポイントの数を減らしながら、なおかつビル全体を無線アクセス可能にできるなるほか、取り扱い可能なデータ量も飛躍的に押し上げられるという。
だが、競合する他社の製品よりも優れたチップを持っていることが、必ずしも成功につながるわけではない。とりわけコモディティ化が進み、またBroadcom、Texas Instruments、Atheros Communications、Intelのような、わずか数社の巨大メーカーしか存在できない市場では、なおさらそのことが当てはまる。
それでも、AirgoのCEOであるRaleighは、こうした意見に反論し、同社の製品は有望な市場セグメントの需要に応えるもので、しかも同社のエンジニアがこの新しいチャンスをものにできる製品を開発できるだろうと述べている。
「革新的な技術を開発するしかない。これは無線市場のフロンティアで、他社よりもきちんと狙いを定め、しかも素早く製品を出していけるところが勝ち残れる」とRaleigh。「今年、我々は重要な市場で、少しだけシェアがとれればいいと考えている。そして、その市場とは、家電および高速無線LANの分野だ」(Raleigh)
Raleighの話では、この2つの市場は、現在のワイヤレスネットワーキング市場よりも、大きな規模になる可能性があるという。個人ユーザーも企業も、Wi-Fiカードを備えたノートPCでインターネットに接続するためのアクセスポイントを購入しているからだ。
調査会社のIn-Stat/MDRによると、Wi-Fiアクセス用のカードやアクセスポイントの出荷台数は2003年に激増し、前年対比200%以上となる2270万台を記録したという。ハードウェアの売上金額は17億ドルで、前年から140%増加した。
「Airgoの製品は、コモディティ化した平凡なものではなく、最先端をいくものだ」というのは、同社に投資しているベンチャーキャピタル、Accel PartnersのPeter Wagner(マネージングパートナー)だ。
Raleighによると、Airgoの多重アンテナネットワーク技術と無線ネットワークチップは、Wi-Fi標準に厳密にしたがって動作したときでさえ、競合製品より高い性能を発揮するという。だが、MIMO技術の本当のメリットを実感するためには、Airgoチップを搭載したカードとアクセスポイントを組み合わせて使い、Wi-Fi標準以外のモードで動作させなくてはならないという。同社によれば、この場合の通信速度は最大108Mbpsにも達し、また競合製品より遠くまで電波を飛ばせるという。ライバルのD-LinkとLinksysでも、同様の転送速度が出せると主張しているものの、両社の技術は隣接する帯域を使用するネットワークに干渉する疑いがあるとされている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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