株価迷走に表れるソニー業績見通しへの期待と不安

 昨年12月上旬以来、順調な株価の上昇が続いていたソニーだが、先週1月23日に高値4470円をつけて以来反落歩調となっている。同社は1月28日に、2004年3月期第3四半期(2003年10〜12月)の決算を発表している。結果はほぼ事前の予想通りだったものの、なお将来の業績に対する不安が払拭できない内容となっていることから、株価が反落調整局面に入っているようだ。

 ソニーの第3四半期の連結決算は、売上高2兆3234億円(前年同期比0.7%増)、営業利益1588億円(同20.4減)、税引前利益1578億円(同21.8%減)、純利益926億円(同26.2%減)となった。

 セグメント別の営業利益では、エレクトロニクス事業がフラットパネルテレビ、DVDレコーダー、デジタルスチルカメラなどデジタル家電のけん引により、世界各地域の現地通貨で2ケタ増収を達成したものの、構造改革費用の計上や、円高での利益の目減りもあり、前年同期比39.7%減の495億円となった。同社は昨年の年末商戦で、デジタル家電市場での挽回を狙い、DVDレコーダーで初の本格的な自社生産品となる「スゴ録」とゲーム機能を付加した「PSX」の販売で攻勢をかけ、それまで数%に過ぎなかったDVDレコーダーでのシェアを一気に30%に高めた。

 さらにゲーム事業では、「PS2」ソフトの販売増加による利益貢献があったものの、値下げによるハードの減収や引き続く研究開発費の増加などもあり、前年同期比で1.6%減の705億円となった。また、前期に「スパイーダーマン」などの記録的なヒットでDVDやVHSソフトの販売増加が大きく利益貢献した映画事業も、その反動減で同82.3%減の56億円と大きく落ち込んだ。このほか、音楽事業はリストラ効果が功を奏して同50.3%増の303億円、金融事業もソニー生命の運用益の改善などで同4倍の126億円に拡大となった。

 しかし、同社では今期を含め今後3年間で3350億円の構造改革費用を計上する計画を打ち出している。この構造改革費用は、今期に1500億円を計上し、残りの1850億円の大半は来期(2005年3月期)に計上する計画となっている。

 ソニーの足元の業績と今後の見通しについて、準大手証券のアナストは「出遅れていたデジタル家電での新製品投入による巻き返し策がようやく実を結んできたことはプラス材料といえる。しかし、このエレクトロニクス事業部門での構造改革費用も増大し、採算を悪化させているという矛盾もはらんでいる。昨年末でDVDレコーダー30%、薄型テレビ25%というシェア獲得には、往年のブランド力の強さの片鱗を感じさせるが、一方で商品に不具合が多発するなど懸念も浮上している。今後、第4四半期(1〜3月)以降もデジタル家電関連のある程度の拡大は期待できるものの、構造改革費用の前倒し計上とゲーム部門の研究開発負担によって利益が圧迫され続ける構図は継続しそうだ」としている。

 株価は、昨年12月上旬の3500円水準からほぼ一本調子の上昇を続け、先週1月23日の高値4470円をつけて以来反落歩調となっている。わずか1カ月程度の短期間で30%近い上昇となったことから、ここしばらくは調整局面が続きそうだ。

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