松下電器産業は1月22日、熊本大学と共同で、めっき処理などによってプラスチック上に形成された薄膜金属を、プラスチックの特性を保ったまま分離する技術を開発したと発表した。同技術を使っためっき剥離装置を2005年度中に商品化する。
2001年に施行させた家電リサイクル法により、家電メーカーは部品や材料の再利用が義務づけられている。松下電器ではテレビの材料構成のうちガラスや金属など約70%が再利用されているが、リサイクル率100%を目指すためには、プラスチックの再利用が課題となっていた。また、めっきに利用される金属には希少なものも多く、高純度で効率的に回収できる技術が求められていた。
めっき加工されたプラスチック(左)と剥離後(右) | |
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家電製品のきょう体や電子回路基盤などで使われるめっき加工されたプラスチックは、そのままではリサイクルが難しく、ほとんどが廃棄されている。金属とプラスチックを分離させるには、酸・アルカリ溶液でメッキを溶かす方法や、粉々にした後静電分離によってプラスチックと金属を分ける方法があるが、溶液の処理が難しいことやコストが高いことからあまり普及していない。
今回発表された技術では、高圧の電気を5万分の1秒というごく短い時間金属に当てるプラズマ放電方式を採用した。これにより発生する衝撃波と熱を当てて金属を飛ばし、プラスチックから物理的に分離させる。この方法だと、金属とプラスチックのリサイクルが簡単にでき、プラスチックの劣化もほとんどないという。また、装置の大きさも「従来の5〜10分の1で済む」(松下電器産業 PAVC社 AVC開発センター 主席技師の久角隆雄氏)とのことだ。
金属に照射する電圧の量などを変えることで、幅広い種類の金属やプラスチックに対応する。凹凸のあるプラスチックでも、認識装置をつければ対応できるという。また、大量の薬剤を用いる従来の方法に比べて環境負荷を減らすことができ、低コストで効率的に金属を回収できるとしている。
松下電器では2005年度中に同技術を使った装置を商品化し、外販していく。A4の大きさであれば、30秒程度で処理できるようになるという。販売先は国内のリサイクル業者が中心となる予定。価格は「700万円程度になるのではないか」(久角氏)とした。なお、松下電器は今回の技術について、熊本大学 電機エネルギー応用研究室 教授の秋山秀典氏と共同で3件の特許を出願している。
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