"+"と"-"の一騎打ちは続く--2層式DVDフォーマットを巡る戦い

 追記型DVDの規格を巡る戦いが続くなか、片方の陣営が、1枚のディスクに現在のほぼ2倍のデータ量を記録できる製品を発表すると見られている。だが、この勝利もメーカー間の不和に決着をつけるものにはならないようだ。

 米Hewlett-Packard、米Dell、蘭Philipsらが推進しているDVD+RW(“プラスR”)陣営は、いわゆる“2層式”DVDの記録機器をこの春までに市場に投入する予定だ。このシステムのディスク容量は8.5GBになると見られているが、これはDVDレベルの品質のビデオ4時間分(VHSレベルの品質では16時間分)に相当し、DVDソフト会社が映画をリリースするのに使っているのとほぼ同じサイズとなる。

 だが、DVD-RやDVD-RWを推進している、いわゆる“dash(あるいは“マイナスR”)”陣営でも、2層式DVDの記録技術開発を進めている。2層式のDVDでは、1枚のディスク上に、ちょうどペンキを塗り重ねるように、別々のデータを書き込めるようになる。そして、両陣営の動向を注視している人々は、ビデオテープの規格を巡るVHSとベータマックスの争いの時とは異なり、“プラス”と“マイナス”の両陣営は当分の間、共存できるかもしれないと述べている。

 2層式で追記が可能なDVDを最初に市場に投入するのはどちらの陣営かに関して、「“プラス”陣営に賭ける」というのは、米Enterprise Storage Groupのアナリスト、Pete Gerrだ。だが、フォーマットをめぐる戦いに関しては、「パイオニアが引こうとしない限り、小競り合いは続くだろう」と同氏はいう。パイオニアは、“マイナス”陣営の主要メーカーのひとつだ。

 米Sony Electronicsの光学製品ブランドマーケティングマネージャのRobert DeMoulinも、「“プラス”陣営が最初に製品を投入すると見ている」と語る。ソニーも他のメーカー同様、“プラス”と“マイナス”の両規格をサポートしたDVD装置を製造している。

 だが、DeMoulinは、古い“マイナス”規格に準拠した製品が市場に多く出回っている点を指摘し、「“マイナス”規格がすぐに廃れるとは思えない」と述べている。

 両陣営の争いは、数年前、いくつかのメーカーがDVDフォーラムの開発した追記技術を支持しなかったことに端を発する。DVDフォーラムは、ライトワンスの追記技術として、「DVD-RAM」と「DVD-R」という2つの規格を承認した。その後、同フォーラムは、1枚のディスクに記録、削除、再記録ができる書き換えの標準規格として、「DVD-RW」を追加した。

 これに対し、反対派の企業各社はDVD+RWアライアンスを結成し、ライトワンスおよび追記可能なDVDに関して、独自技術を発表した。その結果、無数の追記可能なドライブおよびディスクが市場に出回り、消費者の混乱を招いている。例えば、DVD-R/-RW規格をサポートするドライブは、+Rや+RW規格のディスク上には記録できない。また+R、+RW、-R、-RWを用いて記録されたディスクは、理論上は全てDVDプレイヤーで読み込みができることになっている。だが、最近の政府の調査によると、DVDとDVDドライブの互換性実現率は85%程度だったという。

 記録型DVDが単一層から2層式へと移行しても、両陣営の戦いはさらに拡大するだけで、解決へ向かう見込みは少ない。

 映画作品を収録した市販のDVDソフトは、通常2つの層にデータが書き込まれている。だが、こうしたソフトの作成プロセスには、個人ユーザーがDVDを作成する際のレーザーを使って点を焼き付ける方法ではなく、型押し式にディスクをつくる作業が含まれる。2層式DVDの記録技術は、これまで普通の個人ユーザーには提供されていなかったが、新たな技術が発表されれば、家庭でもこれまでより大容量のデータをディスク上に記録できるようになる。

 両陣営とも、2層式記録技術のプロトタイプを製作済みだが、まだ正式な仕様はない。だが、より積極的なスケジュールで開発を進めているのは“プラス”陣営で、すでに通常の再生スピードの2.4倍の速度で2層式ディスクにデータを記録できる、ライトワンス標準の詳細策定を終えている。

 Philipsの光学ストレージ部門グローバルコミュニケーションマネージャのHans Driessenによると、PCで利用される予定の2層式DVDの記録装置は、この春にも登場の見込みで、さらに家電市場をターゲットとした2層式の記録装置は今年後半にも発表されるという。

 一方、米Pioneer Electronicsでビジネスソリューション部門シニアバイスプレジデントを務めるAndy Parsonsによると、2層式DVD-R製品も今年中には登場するという。だが、Parsonsは、2層式の記録装置には規格の種類が何であれ、いくつかの障害があるという。その1つは、2層式ディスクで両方の層を完全に記録できるかどうかという問題だ。これが実現できなければ、予期せぬ動作をするDVDプレイヤーが出てきてしまい、例えば一時的にプログラムが中断するようなことが起こるという。

 8.5GBも容量のあるディスク全体にデータを記録するとなると、記録作業に要する時間が長くなる可能性があるとParsonsは指摘する。「いま我々が検討しているのはその点だ。性急に製品を市場に投入することのないよう、気を付けねばならない」(Parsons)

この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。

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