BIOSの歴史に終止符?--米インテルと米MSが新仕様EFI普及へ

 米Intelと米Microsoftは2004年中に、ソフトウェアとハードウェアの境界線上にあるパーソナルコンピュータの最深部の仕組みを、初めて大々的にオーバーホールすべく準備を進めている。

 両社は、PCの電源投入時や再起動時に、オペレーティングシステム(OS)の読み込みに先だってPCのハードウェアを起動するための新システムとして、EFI(Extensible Firmware Interface)と呼ばれる技術仕様の普及促進を開始する。

 両社は同仕様を標準として推進するためにフォーラムを設立する。もしEFIベースのソフトウェアが広く普及すれば、PC業界の歴史上初めてプレブートソフトウェアが交代することになる。ただし、一部の批判者からは、EFIへの移行に時間がかかったり、あるいは全く実現しない可能性もあるとの意見も出されている。

 現在、PCのハードウェアにOSを読み込む準備をさせる作業はBIOS(Basic Input/Output System)と呼ばれるソフトウェアが処理している。BIOSは、以前は比較的簡単な設計のものだったが、長年にわたって繰り返されてきた新技術への対応に向けた変更や更新の結果、複雑なコードの代名詞へと変貌してしまった。

 EFI推進派では、この新しい仕様によってPCが短時間で起動できるようになるほか、企業各社は機能を追加しやすくなるとしている。

 「OSは4回も世代交代し、バス(PC内部のデータ移動を助けるシステムバス)も数世代を経てきたが、BIOSは最初のバージョンのまま変わらない。これが次第に業界における革新の妨げになりつつある」と、IntelのMike Richmond(ソフトウェアおよびソリューショングループのプラットフォームソフトウェア担当マネジャー)は述べている。

 EFIを搭載した初めてのコンピュータは、昨年11月に米Gatewayから登場している。ほかにも複数のEFI搭載PCが2004年中に登場し、また来年以降さらにその数が増えると見られている。だが、すべてのメーカーが一気にEFIに飛びついているわけではない。PCメーカーはこれまで、特に法人顧客が安定性を優先することから、変化を好んでこなかった。今でもフロッピーディスクドライブが生き残っているのも、こうした理由からである。

 BIOSソフトウェアメーカー最大手の米Phoenix Technologiesは、急いでEFIを採用することはないと述べている。PhoenixのBIOSソフトは、世界の大手PCメーカーの大半が利用しているが、同社ではEFIが標準になるまでその採用の検討は行わないという。一方、同社ではBIOSの後継となる可能性を秘めたCore Management Environment(CME)と呼ばれる技術を、ノートPC向けに独自に開発した。また、2004年中にはサーバやデスクトップ用にも同様のソフトウェアを追加する予定だと、同社幹部は述べている。

 仮にPCメーカー各社が新技術への移行を容易に進めたい考えであれば、早い時期に何らかの対応が必要だとの点で、多くの業界関係者の見方は一致している。

 「古くは1982年にまでさかのぼるいくつものパッチや拡張機能からなるBIOSを、我々はいまだに使っている。これらを整理し、機能を追加するためには何らかの対応が必要だ」と、米Mercury Researchのアナリスト、Dean McCarronは述べている。

EFIとはどんなもの?

 EFIの仕様は、基本的にはPCのプレブート環境で、これによりPCはウイルススキャンや診断用のソフトを走らせることができる。Intelでは、BIOSに代わるプレブートソフトウェアのフレームワークを作成するのにEFIを使っている。このフレームワークは、「Platform Innovation Framework for EFI」と呼ばれ、時には「Tiano」というコード名でも呼ばれることがあるものだが、これを使うことでPCメーカーは、プレブートソフトウェアのモジュールを書けるようになる。このモジュールはWindowsのドライバと似たもので、PCのハードウェアを起動した後に、その制御をOSに引き渡すよう設計されている。

 IntelとMicrosoftは、EFIの普及促進を狙ったフォーラムを立ち上げ、他社での採用を働きかけることで、同仕様を業界標準として売り込んでいく。Richmondによると、同フォーラムは90日以内には正式に発表されるという。

 Intelでは、EFIの採用によって、コンピュータの起動が高速化し、PCやサーバをリモートで管理する機能が改善され、またハードウェアメーカーの製造およびサポートコストが削減---EFI対応のPCでは、たとえばOSを読み込む前に診断用ユーティリティソフトを実行できるようになる-されることで、最終的にはPCメーカーに役立ち、またPCユーザーを喜ばせることになると考え、同仕様を標準として普及させようとしている。

 「(EFIフレームワークは)ブートに必要な部分しか処理しなくてよいため、長期的にはブート時間を短縮できると思う。また、コンピュータ全体の信頼性向上にも役立つ。PCの世界ではこうした点を我慢してきたが、本来はそうあるべきではない」(Richmond)

 IntelとMicrosoftはまた、各々の製品でEFIをサポートすることで、その普及を図る予定である。Microsoftは次期Windows OSの「Longhorn」でEFIをサポートし、またIntelでは将来登場するチップセットでこの技術をサポートする。同社はまた、EFIのフレームワークをサードパーティにライセンス供与してきているが、提供先にはBIOSソフトの開発元も含まれている。

 だが、IntelおよびMicrosoft両社のこうした取り組みにもかかわらず、当初はEFI、BIOS、そしてPhoenixのCMEソフトのような競合技術が共存するのは間違いない。

この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。

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