展望2004:総合電機業界はデジタル家電が混戦模様

 2004年の総合電機業界は、国際的なレベルで見ても本格普及期を迎えた「デジタル家電」に対する各社の取り組みが業績の浮沈を大きく左右することになりそうだ。これまではデジタル家電というと、松下電器産業、ソニーの両社が支配力を発揮してきたが、もはやその神話は崩壊し、総合電機各社が培ってきた独自の技術力を生かして覇権を争う混戦状態に突入しようとしている。

 デジタル家電は、久々に日本企業が世界市場を相手に十分活躍できる事業分野といえる。デジタルカメラ、カメラ付き携帯電話、DVDレコーダー、プラズマテレビ、液晶テレビなど、日本企業が得意とするデジタル関連製品の需要が世界市場で飛躍的な拡大をみせはじめている。

 たとえば、デジタルカメラについて見ると、世界市場での2002年の生産台数が前年比66%増の2455万台と増加し、2003年はさらに前年比34%増の3300万台へと拡大が見込まれている。さらに2005年には5000万台へと拡大する可能性も秘めており、デジタルカメラの世界市場での日本メーカーの推定シェアは90%に達している。デジタルカメラと同様に、カメラ付き携帯電話や、まだ普及段階の初期にあるDVDレコーダー、プラズマテレビ、液晶テレビなどの薄型ディスプレイについても、利益率の高い高級機種については日本のメーカーが圧倒的なシェアを独占する可能性が高いと予想されている。

 デジタルカメラ、薄型テレビについては、国内での地上波デジタル放送の開始、さらに世界レベルではアテネオリンピックの開催という追い風もあり、日本国内だけでなく中国を中心としたアジアや欧米でのデジタル家電製品の需要拡大が見込まれている。

 PC関連製品は海外へと生産がシフトしており、価格競争が激しいことから引き続きマイナス傾向が続くと見られるが、今年は需要が回復し、マイナス幅は小さくなると見られている。特に、2000年以前に生産された製品は陳腐化が始まっており、法人を中心に買い替え需要が顕在化している。さらに最近のブロードバンドの普及に伴い、無線LANがノートパソコンの需要拡大に貢献していることも見逃せない。

 また携帯電話機は、カメラ付き、カラー化、インターネット接続、第3世代機種の普及などにより買い替え需要が加速している。これに加えて、ロシア、中国での需要が加わることで世界的に再度需要拡大が訪れようとしている。

ソニーは新製品投入で背水の陣

 頼みの綱だったゲーム関連部門の不振などで、2004年3月期通期の連結営業益を従来予想の1300億円から1000億円へと大幅に下方修正したソニー。2003年の年末商戦では、文字通りデジタル家電で満を持した戦略商品を投入し、まさに背水の陣の状態となっている。

 その戦略商品は、12月13日にようやく新発売に漕ぎ着けたPSX(家庭用ゲーム機のPS2とDVDレコーダーを融合させた商品)だ。このPSXについて外国証券のアナリストは「PSXの滑り出しは売れ行き好調と聞いているが、クリスマス・年末年始商戦向けとしては発売時期が遅すぎたようだ。さらに、当初5月に計画していた機能に比べ、ハードディスクからDVDへのダビング速度など機能面で下方修正されるといった問題点もある。確かに他社の同レベルDVDレコーダーに比べて販売価格が3万円程度割安だが、かつての高機能・高品質で消費者を圧倒する勢いは感じられない。さらに腑に落ちないのは、同じソニーが年末商戦でDVDレコーダーの“スゴ録”にも注力した点だ。もちろん、2つの商品では需要層も異なるし、場合によっては社内競争も必要な場面もあろうが、いまはその時ではない」としている。

 さらに、中期的に見てもソニーは、ブラウン管テレビに固執したことから自前の薄型パネルの開発が遅れ、外部調達に頼らざるを得ない状況となっている。同社は韓国サムスン電子と液晶パネルの合弁生産の計画を進めているものの、量産は2005年以降となる予定だ。ただ、2003年下期から半導体市場を同社副社長の久夛良木健氏が統括することとなり、最先端の半導体について自前で開発する姿勢をみせはじめている。ソニーは現在1兆円もの半導体を外部調達しているが、今後は世界屈指の技術力を持った半導体メーカーに脱皮できるかどうかが焦点となりそうだ。

松下は海外展開が焦点に

 松下電器産業は、12月19日にグループ企業の松下電工をTOB(株式公開買い付け)の実施により、出資比率を従来の31.8%から51.0%に引き上げ、連結子会社化すると発表した。松下電工の子会社化で松下電器の連結売上高は8兆5000億円規模となり、日立製作所を上回る国内最大の電機メーカーとなった。これにより、2000年6月に就任した中村邦夫社長の推進してきたグループ企業の再編が仕上げの段階に入ったことになる。

 準大手証券のアナリストは「中村社長は“破壊と創造”を掲げて経営構造の改革を推進してきたが、グループ会社の再編推進を図ると同時に、各事業分野での採算を非常に重視していた」としている。松下電器の9月中間期の連結決算は、営業利益796億円(前年同期比59%増)、純利益231億円(同31%増)と文字通りのV字型回復を果たした。その利益拡大のけん引役を果たしたのが、PDP(プラズマ・ディスプレイ・パネル)、液晶テレビ、DVDレコーダー、携帯電話などのいわゆるデジタル家電分野の順調な拡大だ。

 さらに、今後こうしたデジタル家電の世界的な本格普及に伴う増産で、同業他社に比べて松下が圧倒的に有利なのは、多くの半導体を内製できる点にある。

 一方、同社が現在抱えている問題点は、「デバイス部門」と、いわゆる白物家電などを中心とした「アプライアンス部門」の売上高の伸び悩みと採算の悪化だ。さらに、国内最大の電機メーカーになるとはいうものの、松下電器の海外売上高は依然として50%強に止まっており、ソニーの約70%などに比べると海外市場への開拓の遅れは否定できない。急拡大を続けている中国や欧州での売上の拡大が課題といえる。同社は、2006年度に連結売上高営業利益率5%を達成し、2010年には世界最高水準を目指すとしている。

東芝は半導体が絶好調、日立はHDDとディスプレイ事業に期待

 東芝は、半導体事業こそかなり好調に推移しているものの、そのほかの大半の分野で依然として回復の兆しが見えてこない。特にノートPC事業の収益性が一段と悪化している点が気にかかる。半導体部門では、デジカメや携帯電話機向けの旺盛な需要拡大に支えられてNAND型フラッシュメモリ(※)を中心に好調な推移をみせている。このNAND型フラッシュメモリは、東芝が基本特許を押さえており、大容量化でも大きく先行していることから、今後もメモリカード向けに高いシェアの維持が期待できそうだ。

 外国証券のアナリストは「かつては国内有数のブラウン管メーカーだった東芝がキヤノンと共同出資で2004年春にも新会社を設立し、2005年をメドにSED(表面電解ディスプレイ)と呼ばれる新方式の薄型テレビを量産する方針を打ち出した。現在のところいわゆるFPD(フラット・パネル・ディスプレイ)市場は、低価格化が進む液晶と、大型テレビに適したプラズマが2大主流となっている。しかし、新方式のSEDは、大型化ではプラズマと同等とされ、薄型化・省電力においてはプラズマを上回るという見方もあり、中期的には期待材料」としている。

 一方日立製作所は、2004年3月期の連結業績見通しについて、社内売上の消去分の減額などにより8兆円から8兆3500億円へ上方修正した。営業利益については、HDDやディスプレイ事業での上ぶれが期待できるものの、逆にソフト・サービスや重電事業などの下ぶれや、社会保険料負担の150億円程度の増加、厚生年金の代行返上に伴う利益の計上が来期にずれ込むことなどが相殺され、当初の1700億円を据え置いている。なかでも注目されるのは、ディスプレイ、HDD事業での採算の改善が順調に進んでいる点で、来期以降の業績回復に期待が持たれる。

※ NAND型フラッシュメモリ: 大容量データを格納するのに適したフラッシュメモリ(電気的に一括消去・再書き込み可能なメモリー)。NAND型はデジタルカメラやICレコーダーなどのデジタル画像や音楽のデータを記録するのに適している。一度に書き込めるデータ量も大きいため、高速書き込みが可能。

業績上方修正のNEC、依然課題の多い富士通

 NECの業績は、エレクトロデバイス事業でカラー液晶やPDPの黒字化が下期にずれ込んだものの、ネットワークソリューション事業では携帯端末の売上高が大幅に伸び、半導体ソリューション事業でも業績が回復したことで営業利益が大きく伸びている。下期を含む2004年3月期通期の連結業績について9月中間決算の発表時点で、同社は従来予想の売上高4兆8000億円を4兆8500億円(前期比3%増)へ、経常利益1200億円を1600億円(同2.6倍)へ、純利益300億円を400億円(前期は245億円の赤字)へとそれぞれ上方修正した。NECの発表した中期経営戦略によると、今後連結ベースの売上高成長率5%を継続するとともに、年間3000億円を上回るコストの削減を継続させるなどして、2005〜2006年度には連結営業利益率7%、ROE(株主資本利益率)15%などを目指すとしている。

 富士通の9月中間期の連結営業損益は179億9000万円の赤字(前年同期は232億7800万円の赤字)と赤字継続となったが、四半期ベースでは、第1四半期(4〜6月)の378億円の赤字から、第2四半期(7〜9月)は198億円の黒字に転換するなど収益改善傾向が出ている。ソフトウエアサービスと電子デバイスの2事業が、第2四半期で黒字に転換したことが、トータルでの第2四半期黒字転換の主因だ。

 2004年3月期の下期は、ソフトウエアサービス事業が需要期を迎え、さらに採算が向上する見込みにあるほか、関連会社ファナックの株式売却益、合理化効果などの寄与もあり、経常損益は上期の677億円の赤字から、今3月通期では連結経常利益600億円(前期比4.84倍)と経常利益ベースでも大きく好転する見通しにある。しかし一方では、通信事業やLCD(液晶表示装置)事業の再建など課題が山積していることも確かだ。

関西勢2社、シャープと三洋の注目点

 シャープの2004年3月期の業績は、エレクトロニクス事業、電子部品事業がともに堅調な推移をみせており、通期の連結営業利益は前期比45.8%増の1450億円に達する見通しだ。エレクトロニクス事業では、液晶テレビや携帯電話機などのAV・情報通信機器部門がけん引している。また電子部品事業では、CCD(電荷結合素子、電子の眼ともいえる画像撮影用の超小型半導体)センサーなど半導体部門の堅調に加え、太陽電池も軌道に乗りはじめている。液晶部門では、期待のシステム液晶(CGシリコン)の本格量産もスタート、小型液晶拡大のけん引役になりつつある。しかし、大型の液晶パネルでは海外メーカーとの競争が熾烈化している。

 いまのところ、シャープは液晶テレビの世界シェア50%を占め、「デジタル家電の勝ち組」との評価が一般的となっているが、12月1日から米Dellが同分野の国内市場に参入し、17型の液晶テレビを8万5000円という低価格で提供しはじめている。また、同社の携帯電話機の納入先であるNTTドコモやボーダフォンの事業展開への懸念、さらには冷蔵庫、エアコン、洗濯機などのいわゆる白物家電の伸び悩みといったリスク要因があることも認識しておきたい。

 シャープと同じく関西に本社を置く三洋電機は、今3月期の連結営業利益を1010億円としており、2001年3月期の過去最高レベル(1065億円)を上回る可能性もある。情報量が2倍となる次世代光ディスク用の青紫色半導体レーザーは、2003年7月からスタートしたサンプル出荷が順調だ。有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)は同2月から本格供給を開始、生産能力増を急いでいる。供給先の米Eastman Kodakは、デジカメ用ディスプレイ(2.16インチ)にこれを装着して出荷。これも過去最高連結営業利益更新の原動力となりそうだ。

 三洋のここからの注目ポイントは、独自で市場投入する有機EL搭載携帯電話の発売だ。2003年10月に幕張メッセで開かれたCEATECでは、デジタル放送対応携帯電話用に世界初の15型フルカラー有機ELが展示され注目を集めた。また、世界シェア30%とトップにあるデジタルスチルカメラの生産台数を現在の年産1150万台から、来期は2000万台(現在比74%増)に高め、シェアを維持する計画だ。ただ、同社の場合も白物家電の不振の影響から免れることはできていない。

筆者プロフィール
超眼
某新聞社の現役経済ジャーナリスト。株式、債券、外国為替をはじめとする金融マーケットや、各産業界への幅広い取材経験に基づき、鋭い視点で分析を展開する。CNET Japan他、新聞、雑誌などに連載多数。

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