三洋電機はなぜ年初来高値を更新し続けているのか

 主力ハイテク株の株価の戻りが鈍い中で、年末になってもひとり気を吐いて年初来高値を更新し続けている銘柄がある。それは三洋電機だ。年末恒例の各種媒体による相場見通しアンケートでは、来年の活躍期待銘柄として松下電器、トヨタ自動車、武田薬品などの銘柄が下馬評に上っているが、この三洋電機もダークホースとして注目しておきたい企業といえそうだ。

 三洋は22日、2004年3月期のデジタルスチルカメラの生産能力を、2003年3月期の年産1145万台に比べて75%増の2000万台に引き上げると正式に発表した。これが市場関係者の間で改めて高い評価を得ているのに加え、同社は足元の業績も好調な推移をみせている。三洋の今3月期の連結営業利益は1010億円予想とされているが、上方修正されて2001年3月期の過去最高レベル(1065億円)を上回る可能性まで浮上しているのだ。

 業績好調の背景となる要因を探ってみよう。まず、情報量が2倍となる次世代光ディスク用の青紫色半導体レーザーについては、7月からスタートしたサンプル出荷が順調に推移している。また、2月から本格供給をスタートさせた有機ELも、生産能力の増強を急いでいる。有機ELの供給先の米Eastman Kodakは、デジカメ用ディスプレイ(2.16インチ)にこれを装着して出荷しており、これも過去最高連結営業利益更新の原動力となりそうだ。

 さらに同社の注目点となるのは、独自で市場投入する有機EL搭載携帯電話の発売だ。10月に幕張メッセで開かれた映像、情報、通信の複合展示会CEATECでは、デジタル放送対応携帯電話用に世界初の15型フルカラー有機ELが展示され注目を集めた。また、世界シェア30%とトップにあるデジタルスチルカメラについても前述のような大幅な増産を計画しており、現在の高シェアを維持する計画だ。

 同社の株価は11月下旬に450円水準にまで下落したものの、その後はほぼ一貫して下値を切り上げるパターンで上昇基調を堅持している。特に12月の後半からは、それまでの上値抵抗ラインと見られていた520円のレベルを突破して、新たな株価ゾーンに突入してきている。

 今後の三洋電機の株価見通しについて外国証券のアナリストは「12月の後半からかなりの急ピッチで上昇してきただけに、足元の動きは微調整色が強まっている。しかし、東証の信用取引残高を見ると、直近の19日申し込み現在で買い残高が1週間に208万株も減少(売り残高は逆に1週間で64万株の増加)して、信用倍率(※)が1.36倍と一気にきっ抗してきている。こうした株式需給面の改善に加えて、独自の技術力に裏打ちされたデジタルカメラなどで成長力を発揮するものと判断できる」としている。さらに、同社の成長力に対する株価面での本当の評価は来年になってからと見込まれており、「今後は小幅な上下動はあるものの、大勢的に見れば時間をかけながら1000円の大台に乗る可能性は十分ある」としている。

※ 信用倍率: 信用取引の残高で、買い残が売り残の何倍あるのかを示した指数のこと。一般的には、買い残高に対して売り残高が多い(つまり倍率が小さい)ほど、将来的な買い需要(信用売りは、原則的に6カ月以内に反対売買して買い戻さなければならない)が想定できることから、市場では先行きの株価上昇の要因と判断されている。

「株価の真相」の年内更新はこれが最終となります。新年は1月6日より掲載予定です。

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