3G市場で圧倒的優位のKDDI、株価が伸び悩む足かせとは?

 第3世代(3G)携帯電話市場で、すでに圧倒的ともいえるほどの優位な立場を確保しているKDDI。だが同社の株価は、依然として60万円水準に止まる伸び悩みぶりをみせている。その背景には一体何があるのか。

 10月末に発表された同社の今9月中間期の決算はすでに上方修正されていたため、株式市場に大きなインパクトを与えるには到らなかったものの、市場の期待を裏切らない好調な内容だった。同時に明らかにされた2004年3月期通期の連結業績予想は、売上高が2兆8200億円(前期比1.2%増)、経常利益が2400億円(同2.1倍)。年間配当は2400円(前期は2095円)へ増配の見込みとなっている。

 3G携帯電話市場においてKDDIのau事業は、もはや絶対的ともいえる優位性を確立しつつある。「CDMA2000 1X」の月間純増シェアは、4〜9月の平均値が41%とNTTドコモを抜き首位。累計の加入者数も9月末に1000万人(前年度末から340万人増加)を突破した。ドコモも同時期に3Gサービス「FOMA」の加入者数がようやく100万人(同67万人増)の大台に到達し、今期通期予想も146万人から200万人へ引き上げているが、劣勢は歴然となってきた。今後、両者の競争力格差が一段と広がる可能性も指摘されている。

 auが11月28日から東名阪の主要地域で開始した「CDMA 1X WIN」は、最大2.4Mbpsの高速データ通信(FOMAは384Kbps)が可能。業界初の定額料金制度「EZフラット」(月額4200円)も導入した。「1X」と、1Xへの乗り換え促進で加入者が減少している2.5世代の「cdmaOne」、そして新サービス「WIN」を合わせて今年度末の加入者予想は1655万人(同250万人増)。そのうち、WINの加入者は45万人を見込んでおり、「ヘビーユーザーの相当数がWINへ移行するとみている」(小野寺正社長)としている。

 こうした順風満帆状態にもかかわらず、株価は10月14日につけた67万5000円の年初来高値をピークに調整を強いられる展開となり、現在は60万円を挟んだ水準に低迷している。外国証券のアナリストは「機関投資家が気にしているのは、フリーキャッシュフロー※(FCF=純現金収支)の行方」と話す。

 同社の今3月期の設備投資計画は3000億円(前期2462億円、期初想定3380億円)に縮小されたものの、au事業に限定すると上期412億円(前年同期比50.1%減)、下期1428億円(同68.7%増)と極端な下期偏重型となっている。

 今・来期はWIN事業で毎期900億円の新規投資(今後5年間で総額3000億円)が発生する。今9月中間期、同社のFCFは前年同期比3倍の伸びとなったが、来期は株式売却や税負担繰り延べなどの特殊要因がなくなり、設備投資額もWINや光プラス(光ファイバー接続とIP電話、映像配信を組み合わせた総合サービス)の投資負担で、3300億円前後へ増加する見通しだ。半面、実質前倒しで進んでいる有利子負債返済計画(2004年度に残高1兆円)には余裕が生じているため特に問題視する必要はないだろうという見方があるものの、短期的には今9月中間期のFCFがピークとなる可能性もありそうだ。

※ フリーキャッシュフロー(FCF):企業が生み出すキャッシュのうち、企業が自由に使えるもの。「税引き後利益+減価償却費−その期の設備投資金額」の計算式で出た数字がFCFとなる。営業キャッシュフローから事業維持のために必要な設備投資のキャッシュフローを差し引いたもので、新たな企業展開や株主への配当のための資金源となり、経営管理上、企業の業績を示す最も重要な指標のひとつ。一般にはこのFCFの数値が大きい企業ほど企業価値が高くなっている傾向がある。

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