NECは23日、大方の市場関係者の事前予想を上回る9月中間決算を発表し、これに伴って2004年3月期の通期業績予想も上方修正した。一方株価は、4月14日の年初来安値の333円から直近の年初来高値(10月30日の1000円)まで、半年あまりの間に3倍の急騰をみせ、市場全体の修復相場のけん引役としても一定の役割を担ってきた。果たしてNECは、今年末から来春にかけて上昇第2ステージを演じることができるのだろうか。
NECが23日に発表した2004年3月期の9月中間連結決算(米国会計基準)は、売上高が2兆2830億円(前年同期比5%増)、税引前利益が777億円(同3.8倍)、純利益が154億円(同15倍)となった。同社の中間決算は、エレクトロデバイス事業でカラー液晶やPDP(プラズマ・ディスプレイ・パネル)の黒字化が下期にずれ込んだものの、ネットワークソリューション事業では携帯端末の売上高が大幅に伸び、半導体ソリューション事業でも業績が回復したことで営業利益が大きく伸びた。日立、東芝、富士通が苦戦する中、同社の収益改善ぶりは評価されてよい。
さらに注目すべき点は、下期を含む今3月期通期の連結業績予想を上方修正したことだ。従来予想の売上高4兆8000億円を4兆8500億円(前期比3%増)へ、税引前利益1200億円を1600億円(同2.6倍)へ、純利益300億円を400億円(前期は245億円の赤字)へとそれぞれ上方修正した。これを受けて、9月中間期と期末にそれぞれ3円ずつ、年間で6円復配する意向も明らかにしている。
この通期の連結業績予想について外国証券のアナリストは「かなり慎重に判断した数値で、さらなる上方修正の可能性も残されている。まず、純利益は100億円の上方修正となっているが、年金代行返上に伴う特別損失が期初予想の300億円からほぼゼロになる見通しとなっているのをはじめ、同社の場合外国為替相場の変動による収益への影響を受け難い体質を構築しており、現在進行中の円高にも抵抗力の強さを発揮している」としている。
多くの家電製品や半導体・液晶で世界トップの座を明け渡し、自信を失いかけている日本のエレクトロニクス産業だが、従来の「電話」の概念をはみだした携帯電話や、デジタル家電の広がりのなかで見える材料・部品開発分野での底力、そしてユビキタスネットワーク社会到来への対応で業界が復活する可能性が見えてきたことも、同社にとっては追い風となりそうだ。
株価を見ると、確かに半年余りの短期間に3倍の急騰をみせたものの、IT関連銘柄の象徴銘柄としての割高感は感じられない。信用取り組みの面でも24日申込現在で売り残高1080万株、買い残高1736万株で信用倍率1.61倍ときっ抗をみせており、買い残高が重荷になるような状態にはなっていない。ただ、株価1000円の壁をクリアするためには、新たな買いを誘い込むような新鮮な材料が必要といえそうだ。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
「程よく明るい」照明がオフィスにもたらす
業務生産性の向上への意外な効果