シンガポール発--「情報技術(IT)は、もはやエキサイティングなものではない。短期での戦略的な利益をもたらさないためだ」。ある世界的食品会社の上級幹部がそう語っている。
そして事態を改善させるには、ITマネジャーたちの考え方が変わり、「オタクっぽいクローゼット」のなかから抜け出たものとなる必要があると、この人物は指摘した。
「IT業界の人々は、過去10〜15年の間、価値の創造という点で、顧客に過度な期待を抱かせておきながら、十分な成果を出してこなかった」と、Unilever Bestfoodsのアジア太平洋地区担当プレジデント、Tex Gunningは語った。
Gunningの発言は、シンガポールで開催中のIX2003カンファレンスで行われたパネルディスカッションのなかで述べられたもの。このディスカッションのテーマは、今日ITはまだビジネスに具体的な成果をもたらすことができるのか、というものだった。
同ディスカッションでは、今年7月にハーバード・ビジネス・スクールの論文集「Harvard Business Review」に掲載された、あるレポートが取り上げられた。このレポートは、ITの戦略的価値を疑問視し、大きな論争を巻き起こした。
「ITの価値創造能力は最低限のものでしかなく、これまでビジネスマンたちを興奮させるには至らなかった」(Gunning)。
企業は投資を行ったら直ちに利益を上げなくてはならないとの株主の主張に影響され、現在ビジネス界に、四半期ごとに結果を出さなくてはならないという発想が浸透している点も、問題の1つだ。
しかしGunningは、今日最も興味深いITアプリケーションは、いまから5〜10年後に初めて成果を出せるものだと指摘する。そのような野心的なアプリケーションの例としては、異なる企業同士の緊密な連携を可能にする、多様なクロスプラットフォーム環境の統合が挙げられる。
ITマネジャーにとっては、短期的利益の追求ではなく将来的ビジョンに基づいて決定を下すという考え方に、いかに人々を馴れさせるかという点が難問だった。
「技術は大した難問にはならない。難しいのはむしろ人間のほうだ。企業を説得して、長期的な視野で様々な競争能力に投資させられるかどうかが、最大の難関だ」(Gunning)
GunningはITマネジャーたちに対し、企業においてより大きなリーダーシップを発揮できる役割を引き受けるよう訴えた。
同じくパネリストとして参加したHewlett-Packardのアジア太平洋地区担当マネージングディレクター、Paul ChanもGunningと同意見だ、と語った。
Chanは、ITによって本当の意味でビジネスを変える1つの方法は、最高情報責任者(CIO)ではなく、CEOや最高業務執行責任者(COO)などの役員に、IT業務に関する直接的監督権を与えることだと考えている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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