セラーテムの株価乱高下で水面下に交錯する思惑

 画像処理技術開発のセラーテムテクノロジーの株価が9月に入って急騰している。それまで10万円前後で推移していた株価が9月に突如急上昇をはじめ、24日には一時、なんと5倍の50万円まで買い進まれた。その後はさすがに利益確定の売りも出て、先週末にかけて株価は30万円台に下落している。この株価急騰劇と、今後も予想される波乱相場の水面下で交錯する思惑について探った。

 セラーテムテクノロジーは、今年はじめの日経新聞による証券アナリストや機関投資家向けのアンケート調査で「2003年に期待する新興企業」のトップに選ばれるなど、「ITベンチャーの星」と目されていた。ところが2月6日、2003年6月期の12月中間期での大幅減益決算を発表。第2四半期(2002年10〜12月)の業績が急激に落ち込む衝撃的内容に失望売りが殺到し、翌日7日から大量の売りを浴びる展開となり、連日売り気配のままで値つかずの状態が続いた。やっと値がついた14日には、6日終値で73万5000円だった株価が23万5000円にまで暴落、その翌日も下落が続き株価は15万5000円となった。

 かなり極端な業績下方修正だったとはいうものの、これだけならここまでの暴落はなかっただろう。実はその背景として、株価暴落直前に新藤次郎社長自身の不明瞭な持ち株売却の経緯があったのだ。その後7月24日に同社は、証券取引法に違反した疑いがあるとして創業者の新藤社長を解任すると発表した。証券取引法第27条には、5%以上の株式を保有する株主が1%の株式を取得または譲渡した場合には、内閣総理大臣(実際には所轄の財務局)への報告を義務付けている。新藤社長はこの規則に違反し、持ち株が10.47%から6.09%に減少していたものの、これを報告していなかった。こうした異常事態が相次ぐなか、株価は10万円前後の水準で低迷を続けていた。

 ところが9月に入って突如株価が急騰しはじめたのだ。今回の株価上昇のきっかけとされているのが、9月9日に発表したソフトバンク・テクノロジーとの業務提携だった。これは、医療および教育分野における画像保存配信ソフトウェアの販売に関して代理店契約を締結したもの。ブロードバンドの普及やデジタル情報量の増大に伴い、デジタルアセット(画像、イラスト、文書、フォントなど)を効率的に保存、管理、配信する技術の必要性が高まっているのが背景だ。既にセラーテムでは画像を損なうことなく圧縮拡大できるフォーマットとセキュリティシステム機能を持つ管理ソフト「ピクセルセーフ」を保有しており、ソフトバンク・テクノロジーはこれまで進めてきたBBソリューションの画像処理・管理をより高機能に実現するためにセラーテム技術の採用を決めた。ちょうどソフトバンク・テクノロジーの株価が動意づいていたこともあり、セラーテムの株価上昇にも拍車がかかった。

 さらに先週末の26日には、セラーテムテクノロジーが全額出資する米ワシントン州シアトルのLizardTech社がアジア地域での販売を本格化するため、日立ソフトウェアエンジニアリングとデジタル文書高圧縮配信ソフトウェアの販売に関する代理店契約を締結したと発表している。日立ソフトはXMLをベースとしたドキュメント制作・管理システムの構築に多くの経験とノウハウがあり、今回セラーテムテクノロジーと提携することで、高圧縮ドキュメント保存フォーマットである「DjVu(LizardTech社製品)」と連動したドキュメントマネジメントおよび配信ソリューションを提供していく。

 さらに市場の一部では、米Eastman Kodakとの提携がさらに発展するとの思惑も浮上している。外国証券アナリストは、「Eastman Kodakは従来の銀塩写真からデジタルアーカイブ事業へと転換するために、すでに30億ドルの投資資金を用意し、投資・買収を行うと発表している。つまり、Eastman Kodakがセラーテムに対して単なる業務提携にとどまらず、資本提携を求めてくる可能性を取り沙汰しているわけだ」としている。

 こうした提携や買収に関する思惑浮上を手掛かり材料に、株価が1カ月足らずで5倍に暴騰しているだけに、今後もかなり激しい乱高下を覚悟しておいたほうがよさそうだ。セラーテムは週明け29日の市場で、午前中に一時36万8000円まで買い進まれる場面があったものの、その後一転して売りが優勢となり、結局前週末比ストップ安(5万円)の31万円で比例配分となった。大引けで成立した出来高は103株で、なお1143株の売り物を残している。

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