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さすらいのハッカー、全てを語る

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 この2年間というものAdrian Lamoは冒険に満ちた日々を送ってきた。22歳のこの青年は、Yahoo、Microsoft、Excite@Home、そしてWorldComのネットワークに侵入したと公言してきたのである。

 しかし、典型的なハッカーとは違い、システムへの侵入方法を標的となった企業にそのまま伝えるのがLamoのやり方だった。そのため、Lamoが侵入過程で発見したセキュリティ上の脆弱さを、企業側は修復することができたのだ。標的となった企業のなかには、助言を与えてくれたLamoを「親切」とまで言う企業もあった。

 ところが、2002年2月に状況が一転した。Lamoは、New York Timesのネットワークに侵入し、約3000名分の特別寄稿者に関するデータベースにアクセスしたと宣言したのだ。この出来事はLamoに対する2件の刑事告発、Lamoの逮捕、そしてマンハッタン地方裁への出廷へと発展した。

 住所不定で、徹底して根無し草のようなライフスタイルを送っていることで有名なLamoは、「さすらいのハッカー」と呼ばれている。長距離バスで米国中を放浪し、友人宅のソファで眠り、時によっては空き家や廃墟ビルで寝泊りをしていた。

 しかし今や、Lamoのさすらい生活は終わった。連邦治安判事のDebra Freemanは12日(米国時間)、25万ドルの保釈金でLamoの保釈を認めたが、保釈の条件としてカリフォルニア州サクラメント市の両親のもとで生活することに合意するよう求めたからだ。

 CNET News.comは11日、米連邦捜査局(FBI)ニューヨーク地方局に出頭するために移動中だったLamoを追いかけ、空港でのインタビューを行った。

---New York Timesのネットワーク内を探索しているときに、今日のような状況に陥ることを考えましたか。

 過去にどのシステムに侵入した可能性があるかについては、コメントできません。

---でも、企業のネットワークに許可なく侵入したと、記者たちに過去何度も語りましたよね?

 そんなこと絶対にありません。いや(笑)、ええ、言いましたね。

---では、とあるシステムに侵入した時、このような結果になると考えたことは。

 可能性は常に認識していました。しかし、政府はもう少し利口だろうとも思っていました。

---利口とは、どんな風に?

 政府は、資源を意義のある、そして価値ある方法で分配するだろうと考えていたのです。もっと頭が良いだろうと思っていました。今、政府は何を成そうとしているのか、誰を助けようと考えているのか、何の前例を作ろうとしているのか分かりませんね。どれほど控えめな態度を見せても、どんな誠意を持って行動しようとしても、彼らには関係ないんです。考えるだけ無駄です。何があろうと、ただ追ってくるつもりなんです。そんなことだから、実際、誰も正直に行動しようという気にはなりませんね。

---しかし、刑法に違反したのであれば、それは全く妥当な反応なのでは。

 文字通りの法の下では全く適切な反応でしょうが、私自身はこれが妥当な対応だとは思いません。資源の無駄使いです。両親の家の付近を捜査するのに、非常に多くの捜査官が動員されましたが、そんなことをしている間にもっと意味あることをたくさんできたはずです。

---つまり、警察官は誘拐犯やアルカイダのメンバーを探すほうに力をいれるべきだと。

 私はそんなふうに弁護したいわけではありません。「テロリスト探しに専念しろ」などと訴えてごまかすような無神経なことをするつもりはないのです。しかし、とにかく何かもっとましなことができただろうと思います。

---今のような状況を避けるために、何か違うことができた。そう思いませんか。

 私が現在のような状況に置かれているのは、それも世界の設計図の一部だからなのだと信じています。そして、それに従えば全てがうまくいくと確信しています。

---自由意志ではなく運命を信じるということですか。

 とんでもない。歴史はそれ自身によって刻まれ、宇宙はそれ自身によって形成される。そして我々は皆その宇宙の一部なのだと信じています。そして、宇宙がそれ自身によって形成されるとしても、我々もその発展に貢献しており、我々のすること全てが宇宙をよりよい場所にするための小さな波を生んでいる。これが、私が信じている「より偉大な力」に一番近い表現です。

---あなた自身の功績を少し控えめに公表しておけば、事態は変わっていたとは思いませんか。

 違う行動をしていたら、事態は変わっていたと思いますよ。しかし、命あるうちに実行すべきだと感じている使命以外のことをするのは、精神的に信託を裏切っていると思うのです。

---実刑判決を受ける可能性がありますが、心の準備はできていますか。

 信念が何とかしてくれます。

---お気に入りのフレーズですね。どういう意味ですか。

 我々の宿るこの宇宙では、我々のすることに無駄なことはひとつもない、そして宇宙は閉ざされたシステムで、エネルギーは決して消滅せず、我々がすることの全てがあるべき所に再配分・再利用されるという物理法則の下にあるということです。

 私は、これらのことに疑問を抱くような立場にはないのです。不愉快なものかもしれませんが、楽しい時間もあったし、そして今は悪い時期なのです。どちらも受け入れるつもりです。

---悪い時期はどのくらい続くと思いますか。

 私自身が悪い時期だと思っている間はずっとです。連邦保安局での拘束期間は悪い時期となったかもしれません。あの場所では、小さな拘束用の牢屋で一緒だった人たちが本当に恐ろしい囚人映画の登場人物みたいに見えるんです。でも、実際のところ、きちんと人間らしくいられる機会さえあれば、彼らは温かく話しやすい人たちでした。みんなとても親切でした。お互いにアドバイスをしたり、経験談や苦労話、拘束された理由を語り合ったりしました。出るときには、握手もしましたよ。拘束具をつけられた状態でできる範囲の握手をね。

---手錠ではなく、 拘束具をつけられていたのですか。

 本物の拘束具です。

---どのような感じでしたか。

 連邦保安局の人間は皆、仕事をしていたという感じですね。親切な人もいれば、不親切な奴もいた。私を怒らせて反応を見ようとする奴もいましたし、そうではない人もいた。私に食事を持ってきたときに、私に向かって「ほれ、悪党」と言った連邦保安官もいましたね。収容者に対しては、全員が同じ扱いを受けました。

 私はいつも言っていたことをそのまま実行しました。それは、この拘束された経験もほかと同じように学習体験に変えてやるというものです。政府は、コンピュータ使用を制限し、仕事に付くよう強要すれば、私がすることをやめさせられると思っているようです。しかし、政府は私のすることを見ることさえできないと思います。それは本質的に彼らには馴染まないもので、私を制限できるだけの理解や監視を行うことは実際に無理でしょう。

---連邦捜査官の中には、あなたを礼儀正しく扱う人もいたとおっしゃっていましたね。そんなにひどい扱いではなかったと。それは本当ですか。本当なら、その理由は?

 理由は本当に分かりませんが、唯一考えられるのは、いい検察官に当たったということでしょう。それと、この検察官はNew York Timesから事実に関する不正確な情報を受け取っていたということに気づいていないとも考えたいですね。真実が明らかになれば、彼も態度を変えるかもしれません。

---保釈の条件として、仕事に就くか学校に通うことになっていますね。どちらにする予定ですか。

  定時制の学校に通おうと考えています。仕事に就くとしたら、セキュリティに関する仕事はしません。政府の命令通りに私の能力を売り渡すつもりなどありませんから。学校に行くなら一般教養科目を履修して、法律家かジャーナリズムの道へ進む準備をしようと思います。

---どの報道機関で働きたいのですか。

 いい質問です。答えるのが非常に難しい。私が本当に尊敬している報道機関はほとんどないからです。

---Kevin PoulsenやKevin Mitnickと友人だそうですね。どちらも更正した元ハッカーですが、彼らのうちのどちらかを模範として見ていますか。

 いいえ。

---弁護基金については期待をしていますか。

 私のために、Kevin MitnickのガールフレンドのDarcyが弁護基金を集めてくれています。私自身が寄付を求めているのではないし、誰かに寄付を集めてくれとも頼んではいませんけれど・・・。

---でも反対もしていない・・・。

 ええ。今の私は、お金をくれようとしている人に反対する立場にはありません。その基金が訴訟費の一部をカバーしてくれることを願いたいです。

---今回のことは、ほかの人たち、例えば若いハッカーの卵で、あなたを尊敬しているような人にとって、何らかの教訓となったのでしょうか。

 私を模範にする人はいないと思いたいですね。誰かがやったことを繰り返すことに価値があるとは思えません。まだ誰もやっていないことをするべきです。

---法律があることは認める、でも自分がやりたい事を法律が邪魔するときは無視する、と考えているように聞こえますが。

 そんなことは全くありません。私にも法は適用されるし、行動には結果が伴うと分かっています。私が今ここにいるのは、自分の行動の結果を見たいからです。正確には私がやったと言われている行動、についてですが。

---つまり、結果を受け入られる範囲内で、法に背く意思があるということですか。

 裁判の結果、私が法を犯していないことが明らかになるのを望んでいます。現在挙げられている刑事責任が事実に基づくものだと判断されるとは考えていません。それは事実ではない、などと嘆願するつもりもありませんが。

---現在の訴訟は2つだけですが、FBIがほかの事件についても調査を行い、刑事責任を追加してくるのを恐れていますか。

 そうなったら、そのときに対応します。しかし、私に感謝の意を示している企業への侵入容疑で私を告訴するのだとしたら、彼らは一体どんなキャリアを築こうとしてるのか理解できませんね。

---あなたの両親は、今回の事件についてどう思っているのでしょうか。

 家族や親しい友人にとって非常に辛い事件で、皆、かなりの精神的な疲労を感じています。しかし、互いの絆を深める経験にもなっています。

---あなたの両親は「この大馬鹿もの、お前のせいで数千ドルを支払わなければいけない。払える金なんてないのに。家はまた連邦捜査官やカメラマンに詮索され、お前を牢屋から出す保釈金のために家を売らなければならない。もう2度とこんなことをするな」とは、言いませんでしたか。

 いいえ、両親は私を支持し、私を牢屋には入れたくないと思っています。同時に、私がしたことは私にとって大切なことだと理解しています。両親は、私の幸せを応援し、私がすることの価値を理解してくれているのです。

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