米IBMの研究者たちが、トランジスタの新たな製造方法を考案した。この方法により、数年以内にさらに高速かつエネルギー効率の高いチップが開発される可能性がある。
IBMは、同一ウエハ上でストレインドシリコンとシリコンオンインシュレータ(SOI)を組み合わせることに成功した。ストレインドシリコンは、電子がシリコン内を移動する際の速度(電子移動度)を高める。一方SOIは、今日チップ設計者の主要課題となっているエネルギー漏洩を減らす。これら2つを組み合わせることにより、20〜30%ものトランジスタ性能の向上が見込める。なお、この技術を採用したチップは、今年末に発売が開始される予定。
2000年代始めから、半導体の消費電力と性能のどちらを重視するかについての論争が激しさを増したため、半導体の設計者たちは、自分たちの技術における数多くの基本的前提の見直しを行った。現在販売されているチップには2億5000万個ものトランジスタを搭載可能で、ムーアの法則によりその数はさらに増加し続けている。これだけ大量のトランジスタにすばやく電力を供給するのは極めて困難であり、さらにこれらのプロセッサを動作させるのに必要な電力から生じる熱も大きな課題となっている。
また、トランジスタの小型化は電気の漏洩を生じやすい。最先端トランジスタの内部構造の一部はわずか原子数個分の厚さしかない。研究者たちは、これらの問題のいくつかを回避するため、チップ内のシリコン製構成要素の一部を金属製のものに交換するか、あるいは2〜3つのゲートでトランジスタを作ることを提案した。
IBMが開発したSOIは、エネルギー問題を解消するために開発された最初の技術の1つだった。現在この技術はAdvanced Micro Devices(AMD)製Opteronプロセッサに採用されている。
またストレインドシリコンについては、Intelがこのシリコンを使用したPrescottとDothanの2種類のチップを今年末に発売する。ストレインドシリコンは、ウエハの奥深くにシリコン層と大型のゲルマニウム原子を組み込み、その上に純粋なシリコン層を形成するというもので、当初1980年代末から1990年代初頭にかけて導入されたが、大半のチップメーカーは使用を中止した。
ストレインドシリコンの発想そのものは魅力があるものの、挿入方法が複雑なことがネックとなっている。Intelの最高技術責任者(CTO)、Pat Gelsingerによると、同社が初めて90ナノメートル製造プロセスで製造する、新型ストレインドシリコンプロセッサは、完成までに1600〜1700ほどの工程段階を経るという。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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