ヤフー東証1部上場で市場への影響はいかに?

 ヤフーは17日、東証へ上場申請したと発表した。なぜ、この時期に上場に踏み切ったのか、様々にささやかれる思惑と株式市場に与える今後の影響について探った。

 ジャスダック市場で「池の中のクジラ」と言われ続けたヤフーが、早ければ8月中にも東証1部に上場することになった。ヤフーの時価総額は18日大引け段階で1兆9313億円と2兆円近くに達しており、これは、ジャスダック市場全体の総時価総額9兆6131億円(18日大引け現在)のちょうど20%に相当する巨大な存在だ。この2兆円近い時価総額は、東証1部に上場した場合でも20位程度にランクされるのだ。

 ヤフーの東証上場は、これまでにも何度となく取り沙汰されてきた。しかし、6月20日に開催された株主総会でも、株主からの「東証への上場申請はいつか」との質問に対して、会社側は「未定」と回答していた。それがなぜ今回東証への上場を決断したのか。

 準大手証券の投資情報部では「5月下旬以降にIT関連の主力銘柄を中心に株式相場が反転上昇基調に転じてきたことが挙げられる」としている。また、「業績面で比較的順調な推移となってきたこともある上に、懸案となっていたあおぞら銀行の保有株の米投資会社Cerberusへの売却を発表し、その売買代金をグループ全体で取り組んでいるブロードバンド事業に充当しようとしているソフトバンクへの援護射撃の意味もあるだろう」とのことだ。

 ヤフーは17日に、2004年3月期の第1四半期(4〜6月)の決算を発表した。連結売上高が155億円(前年同期比83.6%増、前四半期比8.1%増)、営業利益が84億円(前年同期比106%増、前四半期比8.3%増)、純利益は45億円(前年同期比109%増)だった。

 さらに、今後の焦点となってくるのが東証上場前後のヤフーの株価推移だ。外国証券のアナリストは、同社が東証1部への上場に伴って、通常約1カ月後にはTOPIX(東証株価指数)の対象銘柄となり、機関投資家などからシステマティックに2万5000株程度の組み入れ需要が新規に発生するとのプラス要因がささやかれていると指摘する。しかし一方では、今期の予想PER(株価収益率)がすでに80倍とかなり割高となっていることから、「株価の先行きには悲観的な見方も出ている。当面は、東証上場に伴って新たなファイナンスを実施するかどうかが焦点になりそうだ」としている。

懸念されるジャスダックの運命

 もうひとつ懸念されているのが、ヤフーが抜けた後のジャスダック市場空洞化の問題だ。冒頭にも記したように、ヤフーが抜けることで同市場の時価総額は一気に20%も減少してしまう。これは、即ジャスダック市場の売買代金自体もほぼ同様のスケールで減ることを意味し、市場の運営にも大きな影を落としかねない事態も予想される。

 また、ヤフーがいなくなった市場でその次に時価総額の大きな銘柄というと、現在の第2位がアルゼの2654億円(18日大引け現在)、3位の日本マクドナルドホールディングの2566億円(同)、4位楽天の2080億円(同)と、ヤフーに比べて8分の1から10分の1の小粒な銘柄ばかりとなり、柱となる銘柄が不在となってしまうことになる。さらに、こうした現在の時価総額上位の銘柄も、近い将来東証1部へくら替えしてしまう可能性が高いのだ。ジャスダック市場が投資家にとって「魅力ある市場」を保って行くための課題は非常に多い。

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