インターネット電話(VoIP)はケーブル大手各社が参入し、爆発的成長の兆しをみせているが、一部の大手企業はVoIP事業への参入を躊躇している。
VoIP分野はここ何年間も、期待が大きいわりに供給不足が続いていた。しかし、家庭のブロードバンド導入の急増やサービスの質の向上により、VoIPに対する関心が高まっている。扱いにくいパソコンマイクではなく、通常の電話機でVoIP通話が利用できることも人気が出た要因の1つだ。また、電話料金の安さもさることながら、電子メールやインスタントメッセージ、ビデオ会議と組み合わせられる高度な通信サービス機能も魅力だ。
米Vonageや米8x8などの独立系VoIPサービスプロバイダは、定額料金で1カ月当たり20〜40ドルの市内通話と長距離通話サービスを提供し、従来の電話事業者から顧客を奪いつつある。
顧客のVoIPサービスへの移行で最も恩恵を得るのは、VoIPが必要とする高速接続を握っているケーブル会社だとされている。しかし、最新調査によると、ケーブル会社がすぐに利益を享受することはなさそうだ。米Cox Communicationと米Comcastは、VoIPが急激に普及するのは2004年移行だと予測し、VoIP技術に対して静観の姿勢を取り続けている。その大きな理由はコストだ。以前はVoIPサービス開始のコストは、従来の電話サービスの半分程度とみられていたが、実際は10%ほどしか削減できない。
ケーブル各社は現在のVoIP設備が全国サービスを展開するほどの規模ではないことも懸念している。これまで実施したトライアルのユーザーは少なく、平均して約100人程度だ。さらに、ネットワーク装置は一般的にプロプリエタリソフトウェアで動作し、互換性のことは念頭に置いていない。
しかし、ケーブル業界がVoIPに移行せざるを得ない背景もある。これまで大部分のケーブル会社は、回線交換方式のケーブル電話を230万人のユーザーに販売してきた。しかし、通話とインターネット利用が同時にできないことや音声とその他のデータの区別ができないことから、ケーブル企業は従来の電話サービスより優れたサービスを保証できなかった。そのため、ケーブル業界はVoIPサービスへのアップグレードを図っている。これまでと異なり、次世代のVoIPはPacketCableという標準仕様を基盤とすることが注目すべき点だ。
大手ケーブル会社が少なくとも2004年までVoIP事業への進出を控える中、VoIPの近い将来は8X8、米deltathree、米Net2Phone、Vonageなどの新興企業の肩にかかっている。
顧客は月額わずか20ドルで、無制限の通話サービスをはじめ、発信者番号表示やボイスメールといったプレミアムサービスを利用できる。しかし、Vonageなどの小規模企業が、VoIPサービスを全米市場に広げるのは困難だ。米Verizon Communicationsや米SBC、米Qwest、米Bellsouthなど、従来型の大手電話会社の勢力に挑まなければならない。
大部分のケーブル企業が2002年半ばまでに市場に出揃ったが、一部のアナリストは、「価格戦争激化の行き着くところは統合しかない」とみている。8X8は先頃、VoIPサービスPacket8の値下げを発表したばかりだ。料金は無制限通話が月額20ドルで、Vonageなどの競合他社のほぼ半額である。また、Bell系電話会社もVoIPの価格戦争の波に巻き込まれている。
競争を生き抜くため、VoIPプロバイダの多くは小〜中規模企業に焦点を絞っている。大企業は従来の電話システムから移行するのに費用がかかりすぎるため、VoIPの導入を避ける傾向がある。家庭でVoIP通話を利用するには、広帯域接続とアナログ電話アダプター(ATA)だけ用意すればよい。ATAは約100ドルで、VoIPサービスプロバイダが提供することが多い。しかし大企業の場合は、同時に数百本の電話回線に対応するゲートウェイを購入しなければならない。また、多くの企業は2000年問題の際に、電話ネットワークをすでにアップグレードしてしまったため、VoIPシステムへの再アップグレードに乗り気ではない。
一方、中小企業は躊躇なく新技術に飛びつくため、VoIP市場で注目の的となっている。小企業に特化してVoIP設備を販売する米Altigen CommunicationsのバイスプレジデントのRichard De Sotoは、「大企業はすでに巨額の設備投資を行なっているので、既存の電話システムを撤去する余裕はない。しかし、小規模の企業は古いアナログベースの電話システムを利用している。彼らこそVoIPへ移行しつつある顧客だ」と述べた。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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