米Oracleは先月、米PeopleSoftと米J.D. Edwardsが17億ドル規模の合併に合意したわずか数日後にPeopleSoftの敵対的買収を発表し、ソフトウェア業界に大きな波乱を引き起こした。しかし、Oracleの買収計画に立ちはだかる最大の難関は、PeopleSoftのソフトウェアに数百万ドルを投資した顧客を説得することだ。
Oracleは、PeopleSoftと競合するビジネスアプリケーション分野で、苦戦を強いられている。このため、Oracleの最高経営責任者(CEO)のLarry Ellisonは当初、PeopleSoftの買収後に同社製品の販売を中止し、顧客を自社ソフトウェアに移行させると明言していた。
しかしPeopleSoftの顧客が、このような強硬手段に黙っているはずがない。PeopleSoftの顧客企業は約5100社にのぼり、その多くは過去数年間にPeopleSoftのソフトウェアを導入したばかりである。当然、Oracleの買収計画に強い反感を示している。
顧客が最も懸念しているのは、OracleがPeopleSoftを買収後、PeopleSoft製品をどの程度サポートをしてくれるかである。また、Oracleによるサポートが終了した場合、別の製品を導入するコストも相当な額にのぼる。多くの企業は、少なくとも10年間は使用するつもりでソフトウェアに投資する。ソフトウェアの導入からわずか数年後に、すべてを一からやり直さなければならないのであれば、顧客が怒るのも無理はない。
このような不満を抱えた顧客が、Oracleの買収計画の障害になる可能性がある。ビジネスアプリケーションの選択肢が狭まるのではないかという顧客の懸念は、OracleによるPeopleSoft買収が独占禁止法違反にあたるかどうかという論争の中心になるかもしれない。
またPeopleSoftは、OracleがPeopleSoft製品の販売を中止した場合、ソフトウェア購入費の2〜5倍を返金することを顧客に約束した。Oracleはこれにより、最高3億5400万ドルの出費を強いられる可能性がある。
その後、Oracleは態度を軟化させ、買収が成功したあかつきにはPeopleSoft製品を少なくとも10年間はサポートする姿勢を示した。また、希望する顧客には、Oracleの代替製品を無償で提供するという。
さらにEllisonは7月9日、「63億ドルもかけて買収した企業の顧客を敵に回すのは、愚策である」と述べ、OracleがPeopleSoftの顧客を全面的にサポートする意向であることを強調した。また、さらに1年かかっても買収を完了させる決意であることも明らかにした。
しかし最終的に買収が成功するかどうかは、OracleがPeopleSoftの顧客をどの程度確保できるかにかかっている。PeopleSoftの顧客の少なくとも60%がOracleのデータベースを利用しているが、Oracleに対する不信感を拭いきれない場合、これらの顧客は独SAPや米Microsoftなど、市場の混乱に乗じてシェア拡大を狙う企業に流れる可能性がある。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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