起業家として最初の難関としてたちはだかるのが、シードマネーの確保です。シードマネーは文字通り「種銭」のことで、ビジネスをスタートさせるまでの準備とスタートさせて最初の数カ月を持たせるために必要なお金です。その数カ月で何とかビジネスの原型をつくり、次の増資活動にむかう、というのが成長型ベンチャーの典型的なあり方です。
シードマネーの金額は、手がけるビジネスによりかなりばらつきはありますが、よほど単純なビジネスでないかぎり、2000万円から3000万円くらいはかかるでしょう。場合によっては、億円単位が最初から必要なビジネスもあります「え?そんなお金、みたこともない」ですって?そうです。それが大多数の人には普通です。ではどうするか?
自分の貯蓄ではおそらく足りない
みなさんの現在の貯蓄額はどの程度でしょう?30歳前後で、よくて500万円程度でしょうか。1000万円を超える貯蓄をもつ人はまれでしょう。
2003年2月施行の中小企業挑戦支援法で、商法の最低資本金規制の特例として、条件付きながらも資本金が1円でも起業できる制度が導入されました。さらに報道によれば、2005年の商法改正で最低資本金制度が完全に撤廃されるとのことで、とにかく株式会社を作るのは容易にはなります。電話と机ひとつで自宅でおこせるような、たとえばコンサルタントのような業態や、インターネットを応用してサラリーマンが副業する「週末起業」程度なら、そんな金額でも創業可能ですし、それも大いに意義のあることです。
しかし、もしあなたのビジネスプランがいずれ株式公開を目指すような規模なものであれば、最低限、オフィスをどこかにかまえ、数名規模である程度のオペレーションをまわしたりしてスタートすることになるでしょう。そうなると、シードマネーはどうしても個人の蓄えだけでは足りなくなります。
借金は極力避けよ
昔の創業パターンは、自己資金や親・兄弟・友人・知人からの借金で足りない部分は、圧倒的に銀行や国民金融公庫借り入れでのスタートが多かったようです。ただ、国民金融公庫の申込書をみるとケーキ屋さんの開業などの例がでていて、小さな商店などを想定しており、ダイナミックに成長させていくベンチャービジネスは想定外のようです。しかも、借り入れに担保はつきものです。
ところが、ほとんどの人は担保に出すものがない、そこで、個人保証という禁断の手を使います。つまり、倒産したら、その借金を背負って一生かかってでも返済しつづけるという約束をいれるのです。これは非常に怖いやりかたで、失敗すると何十年も負の資産を負わされてしまう。これでは、個人としてとるリスクが大きすぎます。数百万円程度なら失敗しても何とかなりますが、それ以上の金額については、よほどの覚悟が必要となります。
私は起業にあたって個人保証をいれるのは極力避けたほうがいいと声を大にしていいます。シードマネーを集めるときに誰も投資してくれず、個人保証を入れて借りるしかないようなビジネスアイデアなら、最初からやめとけと。
シードマネー集めの苦労は起業家の試金石
ベンチャービジネスへのマネー供給者の代表格はいわゆるベンチャーキャピタル各社です。ただし、創業前の段階に投資するということはほとんどありません。どんなにアーリーステージで投資するベンチャーキャピタルといえども、会社というハコができて、ある程度ビジネスが回っていないと投資対象にはならず、その意味でシードマネーの供給者ではないのです。
私見ですが、創業マネーの出し手の少なさが、我が国起業経済の最大のネックになっていると思います。ですから政府は、もっと大胆なエンジェル減税政策などを実行すべきです。
しかし、一時のITベンチャーバブル期のように資金調達が容易すぎるのもまた逆に考えものです。つまり「艱難(かんなん)汝を玉にす」という中国の諺どおり、ある程度苦労があったほうがいいのです。創業資金調達は起業家としての力を試される最初の試金石なのです。
最後はあなたの人間力がモノをいう
次週からさまざまなパターンを2回に分けて詳しく述べますが、どんなパターンも、結局最後は、あなた自身が築いた「信用」、あなたのビジネスへの情熱から感じさせる潜在的な力、オーラ。人間力。これらがモノをいいます。アイデアだけではお金は集まりません。現在の職務や課外活動を通じて培ったさまざまな人々からの信用。これはまさにあなたの宝ものです。これを生かすのです。
いずれにしても、自分のお金だけでは全く足りないわけで、誰かに頭を下げ、自分のビジネスに投資してもらわねばなりません。私はずばり申します。多くの人に会い、自分を理解してもらい、信頼を受けるように常日頃から人脈を作っておけ、と。
(以下つづく)
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