「コストをかけて利用量の少ない層を取り込むより、高利用層を確実につかんでいくべき」---ガートナー ジャパン データクエスト アナリスト部門テレコミュニケーション産業分析部主席アナリストの光山奈保子氏は7月3日、日本の携帯電話市場の見通しについて講演した。
携帯電話事業者の収益は契約者数×ARPU(顧客1人当たりの利用料)で計算される。つまり、事業者が収益を伸ばしていくためには契約者数を増加させるか、ARPUを伸ばす必要がある。
しかし、データ通信専用機を除いた日本の携帯電話契約台数は、2002年頃からその伸びが緩やかになっていると光山氏は指摘する。「携帯電話を本当に必要としている層には一通り携帯電話が普及した」(光山氏)
西欧に比べて低い携帯電話普及率
ガートナー データクエストの予測では、日本の携帯電話の普及率は2007年で約65%になるという。これは世界的に見て決して高い数値ではない。「データクエストの予測では、西欧の携帯電話普及率は2002年で79.6%、2007年には90%以上になると見ている」(光山氏)。
国内の携帯電話普及率。2002年頃から伸びが緩やかになっている | |
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西欧の普及率が高い要因として光山氏が指摘するのはプリペイド式携帯電話の存在だ。これにより、普段あまり携帯電話を使わない層にまで普及したこと、電話を利用したい時だけプリペイドカードを購入すればよく、使わない場合でもわざわざ携帯電話を解約する必要がないことが、普及率を高めていると光山氏は分析している。
しかし光山氏は、普及率が全てだとは考えていない。国内でも家族割引やプリペイド式携帯電話の促進によって普及率が上がる可能性はあるが、これらのサービスで増える加入者は基本的に電話をあまり利用しないARPUの低い層だ。「広告宣伝などコストをかけて獲得してどれほどの収益効果があるだろうか。契約者数を増やすより、利用率の高い層を確実につかんでいくほうが収益性を高められる」(光山氏)
また、光山氏は携帯電話の利用形態が海外と国内では違っている点も指摘する。「海外では携帯電話は音声利用が中心のため、プリペイド式でも問題はない。しかし国内はデータ通信の利用が多く、プリペイド式では料金をどう回収するかという問題が生まれる」(光山氏)として、日本市場にプリペイド式は向いていないと示唆した。
国内の事業者で現在プリペイド式携帯に力を入れているのはJ-フォンだけ。「J-フォンの親会社であるVodafoneは世界的にプリペイド式に力を入れることで、収益を損なわずに契約者数を伸ばしてきた。J-フォンもVodafoneのグローバル戦略の一環としてプリペイド式に力を入れており、それなりに販売も伸びているようだ」(光山氏)。しかし他の事業者がプリペイド式に力を入れていないことから、国内の市場もそれほど大きなものにはならないと光山氏は予測している。
第3世代携帯の普及は2004年後半から
国内の月間ARPUの予測。月7000円前後で推移すると見られる | |
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一方ARPUの伸びについて見ると、データ通信の利用が広がるにつれ音声利用は減少の一途をたどっている。それでも、近年は減少幅が少なくなっているとのことだ。これは「最低限の通話が残っているため」と光山氏は分析する。逆にデータ通信の利用は拡大してきており、総通信ARPUにおけるデータ通信ARPUの割合は2002年で19%、2007年には31%になるという。
データ通信はW-CDMA(第3世代携帯)の普及によってさらに伸びると光山氏は予測する。W-CDMAの普及時期については、2004年後半以降に本格化するようだ。「2005年にはPDC(第2世代携帯)の大部分がW-CDMAに移行するだろう」(光山氏)。データ通信全体は2004年から2005年に成長がやや鈍るものの、2006年以降は再び成長率が増加すると見ている。
総合ARPUは年によって変動があるものの、月7000円前後で推移する見通しと光山氏は言う。西欧の2002年のARPUが月1900円程度、2007年でも月2300円程度であるのに比べると、はるかに高い数値だ。海外では音声通話中心のプリペイド式が一般的に普及しており、日本とは利用形態が違うのが理由だという。携帯電話の通信市場規模はゆるやかな成長曲線を描き、2007年度には7兆円超になるとデータクエストでは予測している。
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