NECエレクトロニクスの上場はIT相場復活の起爆剤となるか

 NECエレクトロニクスが7月24日に東証1部に新規上昇する。NECエレクトロニクスは昨年11月1日付で、会社分割法制に基づきNECの汎用DRAMを除いた半導体事業を分社・独立させて誕生した会社だ。株式市場の一部では「NECエレクトロニクスの上場が、回復の兆しを見せはじめたIT相場復活の起爆剤になるのでは」との期待感が寄せられているという。

 NECがNECエレクトロニクスを誕生させる直接のきっかけとなったのは、かつては空前の利益を稼ぎ出したこともある同じ半導体事業の不振が主因となり、2002年3月期に採算の悪化で3120億円の巨額な連結最終赤字の計上を強いられたことだ。市況の乱高下に伴い利益の変動が激しい半導体事業を独立採算制の子会社とすることで、半導体事業の収益改善と、NEC本体の財務体質強化を図るのが狙い。準大手証券の電機担当アナリストは「総合電機大手に共通した問題は、あまりにも幅広い事業部門を抱えているため事業部門ごとの採算意識が薄れがちになるということだった。そこで独立した会社にすることで収益を改善・安定化させることを狙ったわけだ」としている。

 NECエレクトロニクスは設立当初から株式市場への上場準備を進めており、最短で今春での上場を目指していた。ところが、年明け以降の予想以上の相場環境低迷で上場延期を強いられていた。現在は親会社のNECが100%を保有しているが、上場に伴ってNECがNECエレクトロニクスの保有株1050万株を売り出すとともに、NECエレクトロニクス自体も2350万株の新株を発行する。これに伴いNECの出資比率は100%から72.5%に低下する。

 現時点でのNECエレクトロニクス株の想定売り出し価格(ブックビルディングの入札価格条件は6月30日にも正式決定の予定)は1株3750円とされており、市場からの資金調達額は約1275億円となる見通しだ。今回の上場が想定価格通りとなった場合、株式新規公開の規模としてはセイコーエプソンの1200億円を上回り今年最大となる。

同社株価の行方は?

 NECエレクトロニクスが公表している今3月期の連結業績見通しによると、売上高は7050億円(前期比2.8%減)にとどまるものの、税引き前利益440億円(同2.9倍)、純利益260億円(同2.7倍)、1株利益210円となっている。

 NECエレクトロニクスの上場後の株価について外国証券のアナリストは「想定価格の3750円を今期予想1株利益210円で割ったPER(株価収益率)は17.8倍で、妥当な水準だ」としている。ちなみに、事業の規模や内容からして正確な意味での類似企業とは言えないものの、カスタムLSIのトップ企業であるロームの今期予想PERは30倍(6月20日現在)となっており、これを単純にあてはめれば、株価は6300円まで買われてもおかしくないという試算も成り立つことになる。

 同アナリストによると、「そこまでの上昇はないとしても、セイコーエプソンと同様に指標株として機関投資家が必然的に一定の株数を組に入れるとの期待感があることや、上場後も親会社NECの保有株が72.7%と高く、浮動株数が少ないことから売りが出にくい状況も想定される。このため需給的にはタイト感が強く、株価上昇の支援材料となりそうだ」としているが、先行して上場するエプソンのその後の株価推移や、7月24日時点直前の相場環境にも大きく左右されることになる。また、「NECエレクトロニクスの株価上昇がIT関連銘柄全体の底上げにつながる可能性は少ない」と指摘している。

 NECはNECエレクトロニクス株式の売却に伴い約400億円の利益を取得する見通しで、売却益は負債削減に充当して財務体質の改善を進めることにしている。また、NECエレクトロニクスの株価が予想を上回る上昇とれば、その保有株式含み益を評価してNECの株価が改めて見直される可能性もある。

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