ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)は6月13日と14日の2日間にわたり、オープンハウスを実施した。会場ではインタラクションラボラトリーがインタフェースに関する研究成果を公開したほか、基礎研究所は認知科学や通信技術などの研究結果を発表した。
まずインタラクションラボラトリーの展示会場では、現在開発中の様々なインタフェースが紹介されていた。「TouchEngine」というディスプレイは画面を指で押すと「カチッ」という音と共にクリックした感じがしたり、ディスプレイをペンでなぞると紙に文字を書いたような感覚が再現されるもの。実際にはディスプレイのガラス基板の下に画面を振動させるピエゾアクチュエーターを4つ埋め込んでおり、画面に触れるとアクチュエーターがディスプレイ全体を振動させる仕組みだ。
そのほか、人間の導電性を利用したタッチパネルディスプレイ「SmartSkin」も展示されていた。これはパネルの内部にエナメル線を縦横に走らせ、人が手をかざしたときの静電容量を感知するもの。複数の人が同時に入力操作することができたり、1度に複数のアイコンを移動させたりすることができる。実際にお台場のメディアージュなどでも展示されており、一般の人が触ることができるという。
クオリアとは意識されるものすべて
基礎研究所のコーナーでは、ソニーが先日発表した新ブランドの名称にもなった「クオリア」の研究者、茂木健一郎氏が自身の研究成果を発表していた。
茂木氏はまずクオリアについて説明。茂木氏によると、ソニー会長兼CEOの出井伸之氏が提唱するクオリアは、科学分野で使われるクオリアという用語の「部分集合に当たる」という。「出井さんの言うクオリアとは、人を感動させたり、人の欲望をある方向へ向かわせるもの。それに対し、科学分野では意識されるものはすべてクオリアだ」と茂木氏は説明する。
ソニーの製品名によって、クオリアという言葉が一人歩きしてしまうのではないかと懸念されるが、茂木氏は意に介さないようだ。茂木氏は、むしろ「ほっとした」と話す。
「僕自身ずっと物理学をやっていて、苦しさを感じていた。研究では物理現象をすべて数式に表して計算する一方で、音楽会に行ってリラックスし、感動する自分がいる。この二つは相容れず、物理をやっているときはもう片方の自分を切り離しておかねばならなかった。しかし、クオリアという概念に出会ってこの2つが融合した」(茂木氏)
さらに「ソニーのクオリアは、製品の機能ではなく、それによってもたらされる感動を重視している。そういった点でクオリアに目をつけたのは出井さんの慧眼だったと思う」として、クオリアという概念が世の中に広まることを歓迎していると話した。
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