NECの株価が出来高を伴って、週明け26日までで5営業連騰と急上昇をはじめた。気の早い一部市場関係者の間では「危機的な状態が続いている日本の株式相場の修復は、やはり国際優良株といわれる銘柄群がけん引役にならなければならない。そのなかで主役を演じるのはNECではないのか」とささやかれ始めているのだ。
とくに先週末の2日間に株価が急伸するきっかけとなったのは、みずほ証券が22日に発表したNECに関するレポートで、投資判断を従来の「2(やや強気)」から最上格の「1(強気)」に格上げし、さらに株価目標も従来の400円から一気に900円に引き上げたこととされている。同レポートでは「最後の不安要因であった海外携帯電話事業について、リスク対策で過去の日本メーカーの轍(てつ)を踏まない可能性が確認できた」などと指摘。当面の業績がピークとなる2006年3月期の予想1株利益42円40銭をベースに、投資判断を引き上げている。
たしかにNECは、コスト削減や事業構造の改善が進展する一方で、ようやくIP電話やモバイル関連事業などの成長期待分野に経営資源を集中させてきた成果がみえはじめている。また、収益回復の足を引っ張ってきた半導体部門についても、この夏から世界に先駆けて量産をスタートさせている次世代高速DRAM「DDR2」などがリード役となっての改善に期待が持たれている。
しかし、一方で外国証券のアナリストからは「NECは今3月期にようやく黒字転換する見通しで、会社側は連結純利益で300億円を見込み、その予想1株利益は18円15銭に過ぎない。いまから3年も先の42円40銭を根拠に目標株価を設定するにはやや無理があるのではないのか。依然として有利子負債も高水準にあり、NECの財務体質へのリスクは根強く残っているうえに、欧米のIT関連の景気が低迷する懸念も払拭されていない」との声が聞こえてくるのも実情だ。
バリュー銘柄として期待できるNEC
うがった見方をする市場関係者は、「日本の株式相場を長期間の低迷から反転上昇させる条件としては、銀行株の底打ちと国際優良株の復権がどうしても必要だ。今回のりそなホールディングスへの公的資金の強制注入で、銀行株に底打ちの兆しが見えはじめてきた」ことが影響しているのではないかという。
つぎは国際優良株の復権だが、やはりこれには主力ハイテク株の中からのリード役が必要となる。主力ハイテクのなかで現在注目できるのは、液晶の盟主として業績を着実に拡大させているシャープ、半導体事業での構造改革が進展している東芝、デジカメ、携帯電話、2次電池で堅実な成長軌道を維持している三洋電機などもあげられる。しかし、「これらの銘柄については、すでにこの好転の状況がかなり織り込まれている」との見方が一般的だ。
そこで、株価の相対的な位置が依然として低水準にあり、信用取組の面からも売り残が多くて買い戻しが見込める象徴的な銘柄として、「公的年金資金なども含め全員参加型の相場展開が期待できるのはNECしかない」としている。
このNECの株価上昇作戦が首尾良く成功するかどうかは、今後の日本の株式相場に大きな影響を与えることになりそうだ。
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