情報処理振興事業協会(IPA)は5月20日、南山大学数理情報学部教授の青山幹雄氏をコーディネーターに「オープンOSの近未来:ここまできた、これからどうなる」と題したパネルディスカッションを開催した。
日本Linux協会会長で日本ヒューレット・パッカード主幹研究員の鵜飼文敏氏、日本Linux協会副会長でヴァインカーブ代表の鈴木大輔氏、ミラクル・リナックス取締役戦略担当・CTOでOSDL(Open Source Development Lab)理事の吉岡弘隆氏が会場からの質問に答える形で、Linuxを中心としたオープンソースの可能性と課題について議論を交わした。
会場から最初に上がった質問は、「SCOがUNIXライセンス違反でIBMを提訴し、MicrosoftはSCOからUnixの特許をライセンス取得したが、これについてどう思うか」というもの。
鵜飼氏は、「フリーソフトウェアの世界では、GNUシステムに貢献する場合はフリーソフトウェア協会(FSF)に著作権やライセンスを提供するという仕組みをとっている。しかしLinuxの場合はその手続きがなかったために、ライセンス問題が起きたのではないか。今後はライセンスを一括管理する団体が必要になるかもしれない」として、ライセンス管理の問題を指摘した。青山氏も「オープンソースはコミュニティの持ち物であるという考え方があり、ライセンスの議論が明確でなかった」と課題を挙げた。
GPL(General Public License)にも限界が
ミラクル・リナックス取締役、OSDL理事の吉岡弘隆氏
また、オープンソースに関して日本企業は海外の企業に勝てるのかという質問について吉岡氏は、海外では自分のキャリアを築くために各社を渡り歩く技術者が多く、その中でコミュニティが作られる点に海外企業の強みがあると指摘した。しかしオープンソースでは、同じソースコードに関して各社が議論できることから、日本においても企業間の壁を打ち破る可能性があると指摘した。青山氏も「オープンソースは組織をオープンにする可能性を持つ」として、吉岡氏の意見に賛同した。
鈴木氏は「若い技術者が増えていない」と人材不足の問題点を指摘。吉岡氏も「いい意味でのエリート主義が必要だ。素人100人が集まるよりも、1人の優秀な人をどう集めるかが問題だ。オープンソースはその競争が非常に激しいところだといっていい」(吉岡氏)など、オープンソースの可能性だけではなく、多くの課題があることが浮き彫りにされたディスカッションとなった。
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