米IBMは米国時間5月13日、新型の大型汎用機、z990(開発コード名 T-Rex)を発表した。先行するz900に比べて「処理能力は3倍に飛躍する」(IBM)。価格について詳細は明らかにしていないが、エントリーレベルの製品は100万ドルから提供するという。
「メインフレームは終息に向かっている」とする、これまで言われてきた批評にいかに強く対抗できるかを示すように、IBMはz990の開発に1200名のスタッフと10億ドル規模の費用を投じ、4年の歳月を費やした。そして、メインフレーム特有の性能と現在の技術動向を融合したz990がリリースされるに至った。
米Illuminataのアナリスト、Jonathan Euniceは、「現在のメインフレームでは、Java、リレーショナルデータベース、アプリケーションサーバはもちろん、Linuxまでもが稼動している」と語る。「(メインフレームは)TCP/IPやWebサービス、Ethernetを介して全世界とつながっているのだ」(Eunice)
今回IBMがとったのは、メインフレーム本来の性能を向上させながら、外部へのオープン性を高めるという“2面戦略”だった。米Farmers Insurance Groupでシステム運用ディレクターを務めるLarry Bergerは、「この2面戦略が我が社のニーズに合致した」と語る。同社はスイスのZurich Financial Services Groupに買収されたのを受けて、データセンターを統合するための新たなシステムを探していた。
新たなシステムでは、ウェブペースのクレーム処理ソフトウェアを利用するため、WebSphereのような最新ソフトウェアを稼動できることが条件だった。Bergerは今、5台のz900で構成するシステムを、3台のz990で構成するシステムに切り替えている段階だという。
メインフレームの優位性を維持するためのIBMの努力を顕著に示すのが、z990でLinuxをオプションとして提供したことである。IBMサーバーグループのシニアバイスプレジデントを務めるBill Zeitlerは、「当初はLinuxがz990にうまく適合できるか否かを巡って、賛否両論の意見が出た」と語る。
z990担当スタッフの半数は、メインフレームの今後の見通しが明るくなると賛成したが、半数は同社の主力OSであるz/OSの販売低下につながるとして懸念を示した。結局、顧客をつなぎとめるためには新技術を受け入れるしかないと判断し、導入に踏み切ることになった。
Zeitlerは、「新技術がメインフレームで利用できなければ、そもそも顧客がメインフレームを購入することはないだろう」と述べている。また同氏は、「現在、顧客企業の約600社がメインフレーム上でLinuxを稼動している」とも付け加えている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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