当コラム「株価の真相」で2週間前の4月15日に掲載した「ソニーの株価が下げ止まらない本当の理由」で指摘していた問題が現実のものとなった。
先週末25日の東京株式市場で、ソニーには朝方から大量の売り物が殺到、あまりにも売り物が多すぎたために、売り気配が続き取引時間中には売買が成立しない異常事態となった。大引けには比例配分でようやく値段がついたものの、前日比ストップ(500円)安の3220円となった。大引けの出来高は198万6500株。そしてなお、3879万株もの大量の売り物を残す衝撃的な結果となった。 さらに、週明けの28日も大量の売り物が継続し、株価は連日のストップ安となり2720円まで売り込まれた。この「ソニーショック」とも呼ぶべき事態に見舞われたことで、この日の東京株式市場では、主力ハイテク株や銀行株を中心に売り物が優勢となり、日経平均株価は14日以来9営業日ぶりにバブル後の安値を更新し7700円台割れに追い込まれ 、週明け28日も日経平均株価は連日でバブル後最安値を更新している。
同社は24日に発表された前3月期の連結営業利益が、1854億4000万円(前々期比38%増)と増益になったものの、これが従来予想を約1000億円下回ったことと、今期の営業利益が事前の市場予想を大幅に下回り、前期比30%減の1300億円と大幅減益の見通しを会社側が発表したことで大量の失望売りを誘う結果となった。
大手外国証券のアナリストは「市場が失望感を強めたのは、前2003年3月期の連結営業利益1000億円減額の主な要因が第4四半期に集中し、この減額の大半が在庫を抑えるための生産の急速な絞込みによる工場の稼働損にあること、さらに今期の会社側業績見通しの極端な低さ、また今後3年間で3000億円の構造改革費用を計上するという計画にあった」と指摘している。加えて、決算発表の席上で同社の出井伸之会長が「2006年に創業60周年を迎えるが、これに向けて営業利益率(売上高に対しての)10%以上を目指す」との目標を明らかにしたものの、そのための具体策が一切示されなかったことも懸念を加速させたようだ。
決算発表前には、「前期並みか微増」との市場関係者の期待感もあった今3月期の連結営業利益が前期比30%増の1300億円と大幅減益としているのは、パソコン、音響・映像製品といったエレクトロニクス部門の不振を予想しているためだ。さらに、今期は前期の「スパイダーマン」のような映画での大ヒットが望めないことやプレイステーション2の販売台数低下などから、前3月期には利益下支えの源泉となった映画事業やゲーム事業でも利益の減少を見込んでいる。
中堅証券の投資情報部からは「ソニーの業績はここ数年、ゲーム機のプレイステーションに頼り切った内容となってきた。その半面で、パソコンや携帯電話、デジカメ、DVD関連商品ではソニーらしさを発揮できる場面が限られていた。景気の動向に厳しさの加わる欧米市場で、中国をはじめとするアジア諸国メーカーの製品と厳しい競争にさらされることを考えると、ソニーの成長神話を復活させることは至難の技であり、株価面では当面、2000〜5000円程度のボックス相場(※)を繰り返す循環株と判断した方がよさそうだ」との悲観的な声さえ聞こえてくるほどだ。
このソニーの株価大暴落は、単に個別の一企業に止まるものではなく、これまで株式市場で優良銘柄と呼ばれてきた日本の主力ハイテク企業のほとんどすべてに共通の問題点を提示していると言わざるを得ない。
※ ボックス相場:相場が一定の値幅の中を変動すること
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