「理念のないオープンソースでは漂流する」、ストールマン氏講演

永井美智子(CNET Japan編集部)2003年04月25日 21時53分

 フリーソフトウェア財団の設立者で、Linuxなどオープンソース運動の礎となったGNUプロジェクトの立案者でもあるRichard M. Stallman氏が来日し、4月25日都内で講演を行った。ソフトウェアの自由を求めて活動を続ける同氏は、その価値を日本の人々に伝えるべく、2時間にわたって熱弁をふるった。

「自由なソフトウェアと呼んでほしい」

 Stallman氏はフリーソフトウェアという言葉について、「英語でfreeというと『自由』という意味と『無料の』という意味があり、混乱の原因となる」と指摘。「言論の自由(free speech)と無料のビール(free beer)が同じfreeなのはおかしい。英語でフリーソフトウェアと言うのではなく、日本語で『自由なソフトウェア』と言ってほしい」(同氏)

 Stallman氏によると、自由なソフトウェアには4つのレベルがあるという。まずレベル0が、目的を問わずそのプログラムを学ぶことができる、つまりソースコードが開示されている状態。レベル1は、ソースコードにアクセスができ、そのプログラムを勉強すれば誰でも変更が加えられる状態、レベル2は誰でも自由にコピーを配れる状態、そして最後のレベル3が、ソフトウェアに改良を加えたものを、コミュニティにおいて自由に配布できる状態だ。この4つのレベルが満たされたとき、「自由なソフトウェアはあなたのものになる」(同氏)

 もちろんレベル1の状態でも、ユーザーが自分の好きなように改良することは可能だ。しかしこれでは、プログラムの知識がある人が、自分の知っているプログラムについて変更を加えることしかできない。そのため「自ずと限界がある」(同氏)。誰かが変更したプログラムを共有したり、プログラムの知識がない人でも「こういうものが欲しい」というリクエストを出すことで、その恩恵に預かることができるレベル3こそが実務的なのだという。「プロプライエタリなソフトしかない世界では、ユーザーには本当の選択権が与えられていない。自由でないソフトの場合、そのソフトのオーナーに支配権がある。しかし自由なソフトであればユーザーに支配権があるのだ」(同氏)

「私はMicrosoftが嫌いなわけではない」

Richard M. Stallman氏

 また、Stallman氏は自由なソフトの開発者がほとんどはボランティアであることに触れ、「プログラマのモチベーションはお金だけではない」と強調した。現在少なくとも50万人以上のプログラマが自由なソフトの開発をしていると述べた上で、「プログラマがフリーソフトに携わるにはいくつかの理由がある。政治的なイデオロギーやプログラミングが楽しいからという理由のほか、他のプログラマから尊敬されたり、自分の名声を高めることができる。コミュニティに貢献できるという理由もあるだろう。もちろん、それでお金が稼げるからという理由で参加している人もいる。また、Microsoftが嫌いだからという理由もあるだろう」(同氏)。ただし、Stallman氏自身は、「私はMicrosoftが嫌いなわけではない」と断言。自由でないソフトこそが問題なのだとし、Microsoftだけを取り上げるべきではないとした。

 Stallman氏がもう1点強調したのが、フリーソフトウェア運動とLinuxを代表とするオープンソース運動の違いだ。オープンソース運動の最大の問題は、自由という目的が忘れがちになっている点だという。「オープンソースは理念が弱い。私達にとっての成功とは人々に自由を提供することだ。自由を獲得するという理想主義こそが最も重要なものであり、この主義がなければいずれ漂流してしまうだろう」と指摘した。

「LinuxはGNU/Linuxと呼ばれるべき」

 また、Linuxについては、「GNU/Linuxと呼ばれるべきだ」(同氏)と主張する。Linus TorvaldsがOSのカーネルを開発したことで、それまで欠けていたカーネルの部分が満たされ、完全に自由なGNUシステムができあがったことは認めたものの、システムの大部分は十数年にわたるGNUプロジェクトの中で積み上げられてきたものだとアピールした。「Linuxと呼ばれることでTorvaldsが全てを作ったかのように思われてしまい、それまでGNUに貢献してきた人々のことが忘れられている。現在Linuxを使っているユーザーでも、GNUのことを知らない人が多い。GNU/Linuxと呼ばれることで、GNUに対しても注目が集まるようになってほしい」(同氏)

 最後にStallman氏は、日本政府が特許問題に注力していることに触れ「ばかげている」とコメント。「ソフトウェアはシンフォニーに例えられる。どちらもいろいろな要素やアイデアから成り立っている」と前置きした上で、「あらゆる音のシークエンスやコードに特許が付いているとして、あなたがベートーベンだったらどう思うだろう?そのパテントに対して1つ1つ使用料を払わねばならない。いくら苦情を言っても『私達に嫉妬しているだけだ』と言い返される。ソフトウェアも同様だ。ゼロから有益なものを作れる人はほとんどいない。発明というものは通常、古いものと新しいものの組み合わせで成り立っている。ソフトウェアの知的所有権によってソフト開発企業にどれだけの影響が出るか考えなおすべきだ」(同氏)

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