最初の仕事は、富士通総研から
さて、開業第1号の仕事は、富士通総研という富士通のシンクタンクから受注しました。「米国のインターネットビジネスをプロファイリングせよ」という仕事です。富士通総研がネット上でこの仕事がこなせる会社を募集しているのを見て、当社が応募した結果みごと勝ち取ったのです。しかし、金額としては、ひとつプロファイルすると1万5000円というかわいらしい仕事でした。これをのべ300件くらいやったでしょうか。皆でひたすら、米国のWebビジネスを見まくりました。この仕事が後に「インターネットビジネスおたく」になれたきっかけでした。そして、そのエッセンスをのちに「週刊ネットエイジ」というメールマガジンにして、毎週発行しはじめました。すると、その当時まだそのような情報源がなかったことも幸いし、口コミでどんどん読者を広げ、3000名ほどに読まれるまでになりました。
飛躍をつかんだ、週刊ネットエイジと日本初のM&A
週刊ネットエイジは、いまでも当社のホームページのアーカイブとして公開しています。もちろん、内容はいまとなっては古いですが、あのころの熱気はつたわります。ちなみに、日本中で有名になったかのビットバレー宣言もこの週刊ネットエイジで発表したものです(ビットバレーについては、また稿をあらためて書きましょう)。
この週刊ネットエイジの読者のなかから、HotWired などで有名な松山太河君など、その後の当社の屋台骨になってくれた初期メンバーが参集してきます。また、GMO(グローバルメディアオンライン)の熊谷正寿さん、サイバーエージェントの藤田晋さんなど、いまは公開企業の社長になったようなインターネット系の人々も、わざわざこれを読んで当社を訪ねてきてくれました。まさにこのメルマガのおかげで、こちらがリクルート活動することもなく、「いざ鎌倉!」という感じでいろいろな逸材が集まってきました。中にはアンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)の高給をふりきって、当社にきてくれた人もいます。
そして、創業時につくった20のアイデアのひとつ、「ネットディーラーズ」を開発。無謀にもヤフーに直接乗り込み、自動車コンテンツとオンライン見積もりサービスをセットにして、数カ月かかって売り込みに成功。日本初のオンライン自動車見積もり総合サイトNetDealersが始まりました。
これがソフトバンク系のカーポイント社に短期間でM&Aされ、そのときの売却金額で会社の創業時のキャッシュ危機を乗り越えました。これは日本のインターネットビジネスでのM&A第1号でした。このM&Aで得たお金を大事につかいながら、その後10以上のビジネスを立ち上げてスピンオフ(独立会社化)し、現在にいたっています。
ネットエイジがインキュベートしたビジネスには、当社内で発案したものもありますが、学生や若い社会人が副業的にやっていたネットビジネスの原型を助けて、大きく育てた例も少なくありません。たとえば、FreeML、Find Job!、Bizseekなどがあります。また、当社社員として入ってきた後、スピンオフして起業家としての道を歩んでいる人もいます(アクシブ ドットコムの尾関茂雄君、アルトビジョンの椎葉宏君、プロトレードの小野壮彦君など)。ある意味、当社はネット起業家およびその志望者の梁山泊のようなところになっていったのです。ちょうど、漫画界における「トキワ荘」のように。
現在、当社から巣立っていったそれら10社の合計売上は月3億円強くらいですから、年商ベースで約40億円の規模になりました。もっとも、私たちが作ったのはあくまで最初の苗木の部分であり、その後、増資や他のネット企業とのジョイントベンチャーの形で肥料を得ながら成長していきました。これらの合計社員数は300名くらいにはなっているでしょう。つまり日本の雇用にも多少貢献していることになります。
以上が私の起業ストーリーです。当時は、創立時にベンチャーキャピタルの利用など、思いも寄らないことでした。資本政策、資金集めのノウハウもゼロ。まったくの徒手空拳の創業で、ほんとに「盲目蛇におじず」でしたね。ここまでこられたのは、人の縁にめぐまれたことと、タイミングのよさ、そして不思議な幸運以外の何物でもない、と思います。でも、これらの起業ノウハウを知っていればもっとスムーズに展開できたのに、とくやしい思いをすることもあります。
幸いなことに、この4年間に起業をとりまく諸制度、諸インフラは大きく進展しました。きちんとステップを踏めば、私のような苦労をせずに起業できる道が開かれているのです。これから起業される皆さんは、ぜひこのノウハウを身に着け、もうすこしきちんとリスク管理をされることをおすすめします。その方法論をこれからの連載でたっぷり述べますのでオタノシミに!
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